評判に違わぬ作品でした。全編モノローグ形式にも関わらず、終始突き放したようなクールな語り口が印象的です。
読み始めた途端、これは違うなと感じました。我が子を亡くしたにも関わらず口調は極めて冷静。悲しんでいないわけではないのに、口から出る台詞はあくまで淡々として客観的。凄みがあります。
女性教師の独白だけでここまで話を引っ張れるものなのかと感心しました。なにしろ場面転換なしで、壇上から延々と生徒に喋りつづけているわけですから。
1章を読み終えて、「あれ、短編集だったの?」と思ってしまいました。あまりにも綺麗に終わっていたので。もともと1章の「聖職者」だけで、小説推理新人賞を獲得していたんですね。とても納得です。2章が別の登場人物により引き継がれて、ちょっと得した気分になりました。
後味が悪いという評判もあるようですが、どうなんでしょうね。私としては溜飲の下がるラストだと思いましたが。基本ほのぼの好きとはいえ、やはりミステリ読みの端くれとして免疫が鍛えられているからかもしれません。
ただ、ラストはともかく後半数話の展開はちょっとご都合主義な感じもしました。作品の完成度だけなら1章のみの方が高かったように思いますが、エンターテインメントとして考えると難しいところなのかもしれません。いずれにしろ、かなり高いレベルでのお話。文章力、構成力、ミステリ的仕掛けのどれをとっても一級の名作です。
評価:★★★★☆
2010年5月31日月曜日
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