2010年5月29日土曜日

『鯨の王』(藤崎慎吾) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

でっかい鯨が超能力(?)で人を襲う話です。襲うといっても、もともと悪いのは人間の方なので、仕返しされるといった方がいいでしょうか。人間たちの思惑がちっぽけに感じる、痛快なお話でした。



主人公の鯨学者「須藤秀弘」、最悪です。妻にも娘にも逃げられた50近い巨漢のおっさん。学者としてはそれなりに優秀ですが、酒飲みで素行も悪く、異端の研究により学会でも爪弾きもの。若い娘と二人で乗った狭い潜水艇内で平気で小便するし。ヒロインの「ホノカ」も流石にこれにはデレないだろうと思っていましたが、さてどうなったでしょう。

鯨関係ですから、環境問題と絡めて読むこともできるかもしれません。そういう文脈でなら、どちらかというと鯨擁護的な作品ということになるのでしょうか。でも、あんまりそういう裏側を考えて読む話ではないですね。単純にエンターテインメントとして面白いし、それで充分だと思います。

須藤を担ぎ出した民間企業や、海底でちょっといけないことをしていたアメリカの軍事機関や、鯨を聖なる者と崇める宗教団体や、そういうものの一切が小賢しく感じられる「鯨の王」の無双っぷりを楽しんでみてください。ちょっと捕鯨反対派に共感しちゃいそうになりましたよ。

評価:★★★☆☆

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