死体を清めて美しく送り出す、江戸時代の三昧聖を描く連作短編。父に死なれた少女「お縁」が自らの決断により屍洗いとなることを望み、様々な形の死と向き合うなかで成長していくお話です。
同作者の八朔の雪から始まる「みをつくし料理帖」のシリーズがかなり気に入ったので、その延長で手にとってみたのですが、こちらのほうが更に好みかもしれません。
屍洗いという死と直接向き合う仕事であるだけに、話しの内容は結構重いです。でも、主人公を囲む人たちがいい人ばかりのせいもあってか、後味は決して悪くない仕上がりとなっています。
表題の「出世花」は小説NON短編時代小説賞の奨励賞を受賞した作品だそうです。筆者はかつて漫画の原作をしていたそうで、まったくの素人ではなかったようですが、それでも2話、3話と話しを連ねるたびに、なるほどこなれてくる印象を受けます。最終4話目では涙腺が緩みました。
ただ感傷を誘うだけでなく、ミステリ要素も散りばめられているのがまさに私の好みにドンピシャです。検視などの発達していなかった時代、死体をよく目にし、しかも各々の死体の状態を書き留めておく勤勉さを持った主人公は、しばしばお役人をお助けすることになります。
もう少しドロドロした演出のほうが専門的な評価は高まるのかもしれませんが、エンターテイメントが好きな私としては、まさにぎりぎりのバランスの上に立つ珠玉の作品といえます。まだ1冊しか出てないようですが、是非ともシリーズ化を待ちたいところです。
評価:★★★★★
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2010年5月8日土曜日
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