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2011年1月27日木曜日

ポリス猫DCの事件簿(若竹七海) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

葉崎市「猫島」を舞台にした、猫がたくさん出てくる連作ミステリ短編集です。猫好きの方にお勧め。葉崎市のシリーズは基本のんびり基調ですが、わけても猫島はゆるすぎるくらいゆるい感じがとても和みます。



葉崎市シリーズでは7作目になるでしょうか。他のシリーズ作品が未読でも全然大丈夫ですが、同じ猫島を舞台にした「猫島ハウスの騒動」は、登場人物も多く被っているので、先に読んでおいたほうがベターかもしれません。

主役の警察猫(?)「DC」と「七瀬晃(ななせあきら:男です)」巡査は、前作に引き続いての登場となります。とりわけポリス猫は前回から存在感を発揮しまくっていましたので、再び猫島を舞台とするのであれば主役抜擢も当然というところでしょうか。

前作ヒロインの「杉浦響子(すぎうらきょうこ)」をはじめ、おなじみ他の住人達もしっかりちゃっかり登場しています。しかし、海水浴と猫だけが売りだったはずの猫島ですが、観光地としてのほほんとレベルアップしていっている感じです。資本主義何それ?的な雰囲気は全く変わりませんが。

短編7本にプロローグ + エピローグの構成となります。基本猫がらみの事件が中心で、解決のきっかけはDCから。きっかけというか、DCが推理したのを七瀬が汲み取る感じです。でっぷりどっかり貫禄ばっちりのDCもさることながら、頼りなさげな七瀬君もなかなかの推理力を見せてくれています。

ただ、ミステリとしては少し弱いかもしれませんね。一応連作短編形式ですが、最後のオチはちょっとわかりにくかったです。若竹七海さんの毒や切れ味を求める向きには肩透かしなところもあるかもしれませんが、猫島の緩々な雰囲気に浸るのが本書の正しい楽しみ方ではないかと個人的には思います。

評価:★★★☆☆

2010年12月6日月曜日

みんなのふこう(若竹七海) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

不幸体質でありながら天真爛漫な17歳のフリーター「ココロちゃん」。彼女が遭遇する数々の事件を第三者視点から語り継いで行く、異色の連作短編ミステリーです。葉崎市シリーズの既刊を読んでいなくても問題ありませんが、猫島や角田先生など、知ってるとニヤリとできるネタは結構あるかもしれません。



物語の最初の半分は、葉崎FMの人気コーナー「みんなの不幸」が舞台となります。ココロちゃんの友人だという<ココロちゃんのぺんぺん草>さんによる投稿が、ココロちゃんブームを巻き起こしますが、物語はやがてきな臭い方向へ。

後半では一転、病院会報やら新聞記事やらメールのやり取りやら作家のコラムやら、様々な方向に視点が切り替わり飽きさせません。シリーズではおなじみの作家「角田広大」夫妻も割りとコアなかたちで話に絡んでくるのは嬉しいところです。

本書の最大の魅力はもちろん「ココロちゃん」のパーソナリティ。度々不幸に見まわれる可哀想な子でありながら、天然な性格のため全く陰惨さを感じさせません。後から考えると「プラスマイナスゼロ」のテンコと設定が被ってますが、キャラ付けが大分違うので、読んでる最中は気になりませんでした。

ヒロインでありながら彼女が直接出てくることは一度もないのが面白いところです。他の人間が語るエピソードのなかでの間接的な登場に終始します。こういう設定のミステリだと色々警戒心も沸きそうですが、本作に関してはあまり考えず素直に楽しんだほうが良いのではないかと思います。

話の顛末は若干あっさり目な印象でしたが、作品の雰囲気的にはぴったりなラストだったという気もします。筆者ならではの毒も軽快な雰囲気のおかげで程よいスパイスに。構えず気楽に楽しめる一冊です。

評価:★★★☆☆

関連レビュー:
プラスマイナスゼロ(若竹七海)

2010年11月6日土曜日

プラスマイナスゼロ(若竹七海) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

葉崎市を舞台に女子高生3人が活躍するミステリ短編集。純粋なミステリだけでなくオカルトもあります。コミカルホラー(矛盾のある表現ですが)といったほうがよいかもしれません。ホノボノした雰囲気のなかにも、若竹さんならではの毒がピリッと効いています。



タイトルは要するに「良い子、悪い子、普通の子」。二次募集においてあらゆる生徒の受け皿となる葉崎山高校。お嬢様な天然系優等生「天知百合子(テンコ)」、赤毛の暴力女だけど情に厚い「黒岩有理(ユーリ)」、そして容姿、成績、家庭環境から靴のサイズまで全てが平均値の「崎谷美咲(ミサキ)」。

ありがちといえばありがちなキャラ設定なのですが、そこは人間の悪意を描くのが得意な筆者のこと。一筋縄ではいきません。といいますか、お嬢様キャラに野ぐ○させないでほしいです(^^;

一話目は幽霊の出てくるはっきりしたホラー。そっち方面の作品なのかと思ったら、残りの作品は超常現象が皆無です。ちょっとちぐはぐな気もしたのですが、これもミスディレクションでしょうか。

全てに普通という触れ込みのミサキが、基本的には語り手にして一応探偵役っぽくなっています。もっとも、あからさまな謎解きというのは少ないですが。自分で普通といってますが、ミサキも朱に交わるまでもなく相当変わり者という気がします。

葉崎市のシリーズはこれで5作目になるようですが、本書は「クール・キャンデー」の次に好きかもしれません。設定としてはものすごくストレートな青春小説のはずなのに、どことなく黒いもののブレンド具合が素敵です。

評価:★★★★☆

2010年8月13日金曜日

遺品(若竹七海) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

設定としてはとても直球なホラー作品なのですが、ブラックではあってもあまり怖くはないので、ホラーが苦手な方でも安心して手にとっていただけるかと思います。サスペンス仕立てで最後まで一気に読んでしまいましたが、オチについてはちょっとモヤモヤした感じでした。



美術館閉鎖に伴い無職となった元学芸員の「わたし」に、女優であり作家でもあった「曾根繭子」の遺品を整理し、客寄せのため一般公開する手伝いをしてほしいとの依頼が来ます。場所は金沢の山の中にあるリゾートホテル「銀鱗荘」。ホラーの舞台としてはこの上なく良い雰囲気です。

遺品の整理をするうちに、お約束どおり色々な怪異がおきます。それぞれの事件については結構凄惨なものもあるのですが、著者特有のクールな文体のため、さほど真に迫った怖さは感じられません。ホラーファンには物足りないかもしれませんが、怖いものが苦手な私にはちょうど良かったです。

徐々に盛り上がっていきクライマックスに至るまでは完璧な展開だったのですが、最後はこう落とすのかぁ・・・と少し拍子抜けしました。ミステリではないので論理的な解決を求めているわけではなかったのですが、なんとなく唐突というか、腑に落ちない印象が残ってしまいました。

あまり感情を揺さぶるような作品ではありませんが、だからといって物足りないということではありません。丹精でクールな展開はとても私好みでした。ラストに「クール・キャンデー」のような強烈なオチがあれば満点だったのですが、少なくとも本書を読んで損するということはないでしょう。

評価:★★☆☆☆

2010年6月14日月曜日

『死んでも治らない』(若竹七海) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

警察を退職後、作家に転身した「大道寺圭」が遭遇した5つの事件についての連作短篇。同時に語られる「大道寺圭最後の事件」が、現在と過去を微妙にリンクさせる技ありな作りとなっています。



「死んでも治らない」は大道寺圭初著作のタイトル。実際にあったマヌケな犯罪者たちについてつづられているそうな。「治らない」のは「馬鹿」のこと。かといって、本作がまったくおマヌケなテイストかというと、そうでもありません。

詳細はネタバレになるので避けますが、結構ブラックです。ブラックといっても、表現がグロいとかでなく機知に富んだ黒さなので、ホラー嫌いな方でもそれほど抵抗は感じさせないかと思います。

主人公の大道寺圭がなかなか格好いいです。裏書きにてコージ・ハードボイルドと評されるのもなるほどです。もう少し女性の影があってもいいかと思っていましたが、これも伏線だったのかなと読了後に思いました。考えすぎな気もしますが。

若竹七海氏のコージーミステリが好きで、葉崎市シリーズは大体読んでいまが、氏のもう一つの持ち味であるブラックなテイストについても結構いけそうな気がしてきました。

評価:★★★☆☆