不幸体質でありながら天真爛漫な17歳のフリーター「ココロちゃん」。彼女が遭遇する数々の事件を第三者視点から語り継いで行く、異色の連作短編ミステリーです。葉崎市シリーズの既刊を読んでいなくても問題ありませんが、猫島や角田先生など、知ってるとニヤリとできるネタは結構あるかもしれません。
物語の最初の半分は、葉崎FMの人気コーナー「みんなの不幸」が舞台となります。ココロちゃんの友人だという<ココロちゃんのぺんぺん草>さんによる投稿が、ココロちゃんブームを巻き起こしますが、物語はやがてきな臭い方向へ。
後半では一転、病院会報やら新聞記事やらメールのやり取りやら作家のコラムやら、様々な方向に視点が切り替わり飽きさせません。シリーズではおなじみの作家「角田広大」夫妻も割りとコアなかたちで話に絡んでくるのは嬉しいところです。
本書の最大の魅力はもちろん「ココロちゃん」のパーソナリティ。度々不幸に見まわれる可哀想な子でありながら、天然な性格のため全く陰惨さを感じさせません。後から考えると「プラスマイナスゼロ」のテンコと設定が被ってますが、キャラ付けが大分違うので、読んでる最中は気になりませんでした。
ヒロインでありながら彼女が直接出てくることは一度もないのが面白いところです。他の人間が語るエピソードのなかでの間接的な登場に終始します。こういう設定のミステリだと色々警戒心も沸きそうですが、本作に関してはあまり考えず素直に楽しんだほうが良いのではないかと思います。
話の顛末は若干あっさり目な印象でしたが、作品の雰囲気的にはぴったりなラストだったという気もします。筆者ならではの毒も軽快な雰囲気のおかげで程よいスパイスに。構えず気楽に楽しめる一冊です。
評価:★★★☆☆
関連レビュー:
プラスマイナスゼロ(若竹七海)
2010年12月6日月曜日
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