好きな作家を追いかけるタイプの私としては、複数作家によるアンソロジーという形式はあまり好きではないのですが、今回は似鳥鶏さんの新作がどうしても読みたくて手にとってみました。大きなはずれのない作品集だったのでほっとしましたが、やはり雑多なのはあまり好みではないかもしれません・・・
タイトルからして学園物ばかりかと思いきや、大学生や果ては三十路のオッサンが主人公の渋い作品まで紛れ込んでいます。似鳥さん以外では、梓崎優さんの作品を読めたのは収穫ですかね。以下、各話の感想です。
■ 似鳥鶏「お届け先には不思議を添えて」
柳瀬先輩も翠も登場しない代わりに妹がちょい役で出てきてヒロイン分を補ってくれます。食事シーンには性格が現われる?ミステリとしてもなかなか良かったです。
■ 鵜林伸也「ボールがない」
何か色々と無理がありそうな話という気はしましたが、公立の高校野球強豪校という舞台は門外漢として興味深い設定でした。長編でじっくり話を作ってもらった方が味が出そうな印象。
■ 相沢沙呼「恋のおまじないのチンク・ア・チンク」
「午前零時のサンドリヨン」のシリーズだそうです。噂には聞いてましたが、この主人公は結構読む人を選びそうですね。私は駄目でした。こういうタイプの少年主人公は、同性視点からだとちょっとしんどい気がします。
■ 市井豊「横槍ワイン」
ちょっぴりご都合主義な結末。でもそれがいいですね。ミステリとしてのリアリティはともかく、骨格がしっかりしてるのが好印象。何作か雑誌で掲載されている「聴き屋」シリーズの作品なのだそうです。近々本になりそうなので、これは買うかもしれません。
■ 梓崎優「スプリング・ハズ・カム」
ミステリとしてフェアなのかどうかは微妙ですが、本書で一番「おっ」とさせられた作品。短編という制約のなかでこれだけしっかり伏線が練りこまれているのはお見事。評判のよい「叫びと祈り」にも俄然関心がわいてきました。
それなりに収穫は多かったものの、やはりアンソロジーへの苦手意識はぬぐえずじまい。個々の作品がどうこうと言うより、流れが断ち切られるような感じがしてしまうのですね。私は本読みとして視野が狭すぎるのかもしれません。
評価:★★☆☆☆
2010年12月7日火曜日
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