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2010年11月15日月曜日

東京科学散歩(竹内 薫, 中川達也) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

東京都内の散歩スポットが紹介されていますが、それらにまつわるちょっとした疑問に対して、科学的説明が加えられているのが本書の特徴です。もっとも、「科学」の部分はあまり期待しすぎないほうが良いかもしれません。気の抜けた楽に読める一冊です。



新しい散歩スポットを探すというより、知ってる場所を別の視点から読むという気でいたほうが楽しめると思います。目次は以下の通りです。

1 東京スカイツリーは大地震でも倒れない? 押上・東京スカイツリー
2 富士塚で富士登山と同じ効果がある? 千駄ヶ谷・鳩森八幡神社
3 桜の花の色はだんだん白くなっている? 上野恩賜公園
4 「パワースポット」のパワーはどこから発生している? 原宿・明治神宮
5 江戸前は本当に美味しいのか? 築地市場
6 黒い砂浜と白い砂浜の謎 お台場海浜公園
7 湧水の水はなぜ美味しい? 国分寺・殿ヶ谷戸庭園
8 不動様はなぜ五色? 目黒不動
9 クラゲはなぜ夏の終わりにやってくるのか? 葛西臨海公園
10 雨男・雨女の根拠は? 日野・高幡不動
11 花粉症は都会の病? 江東区・夢の島
12 地平線の月はなぜ大きい? 六本木ヒルズ
13 田園調布は古代から高級住宅地だった? 多摩川台古墳群
14 東京に地下世界がある? 幻の新橋駅
15 三毛猫はなぜメスだけなのか? 谷中・根津・千駄木
16 最新!お台場科学館めぐり 日本科学未来館、ソニーエクスプローラサイエンス、リスーピア

私は最近、国分寺に行くことが多いので、殿ヶ谷戸公園が気になって本書を手に取りました。スカイツリーやお台場などの有名な観光スポットより、千駄ヶ谷や根津などちょっとマイナーな場所のほうがむしろ楽しく読めた気がします。

科学のお話しもそれなりにためになりましたが、タイトルからお分かりのようにトンでも系のトピックも多いです。ただ、解説の竹内氏自身が無茶振りだと顔をしかめるお茶目さなので、肩を抜いて読む分には良いのではと思います。

スカイツリーは自宅から少し歩けば見れるくらいのところに住んでいますが、それも友達に言われるまで気がつかない体たらく。そういえば墨田公園もわりと近所なのに全く行ったことがありません。本書をきっかけに、少々足を運んでみようかという気になりました。

ガイドブックとして読むには若干薄いと思います。あまり多くを求めず、目次をみて気になるところがあれば目を通してみるという読み方が良いのではないかと思います。

評価:★★☆☆☆

2010年11月8日月曜日

日本は世界4位の海洋大国(山田吉彦) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

タイトルは少々大げさですが、海洋資源や国境問題に関する最新のトピックが、実に冷静に説明されています。一部ネトウヨ的感情論になっていないのが良かったです。



タイトルの4位というのは若干微妙で、面積だけなら6位となるそうです。4位というのは海水量という三次元的視点からのもの。それでも海洋大国という言葉に恥じない広さではあるといえます。

本書では、いわゆる海洋資源を「海底資源」、「海洋資源」、「水産資源」の3つに分類しています。海底資源は油田、水産資源はお魚。この両者は結構馴染み深い概念ですが、「海洋資源」というのが新しいですね。

海水のなかにはエネルギーやレアメタルなどが溶け込んでいるわけですが、科学技術の発展によりそれらの抽出技術が実用化の段階まで迫りつつあるそうです。この分野では日本が最先端を走っているとか。

やはり懸念は領土問題となるでしょう。地理的にみれば、日本というただ一国の存在により中国も韓国もあたかも監獄に捉えられているような状況です。P17の地図を見れば、両国が領土問題に熱心なのもある意味当然のような気がします。

領土問題について気になったのは、実効支配についての考え方です。
利用していない土地は、島とは認めないという風潮が世界にはある。排他的経済水域の主張においては、人間の居住という点が重視されているのだ。
この考え方に照らし合わせると、日本の離島政策は実にお粗末だというのが筆者の主張です。

竹島は、韓国による不当占拠からすでに60年もの実効支配が続いています。ここまでくると、いくらサンフランシスコ条約を盾にとっても、完全に日本の領土と主張するのは徐々に難しくなって来るかも知れません。

もっとも国はただ手をこまねいているだけではありません。2007年に成立した「海洋基本法」など、日本の「海」の取り組みが着実に前進しているようであるのは頼もしいことですが、こういうポジティブなことはあまり話題になりにくいのかなという気はしますね。不思議なことです。

領土問題について中韓の動きやマスコミ報道に反射神経で対応する前に、本書のような周辺知識を押さえておくことは、民度の高さを誇りたい向きの方々には大事なことではないかと思います。

評価:★★★★☆

2010年6月19日土曜日

『世界潮流の読み方』(ビル・エモット) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

日本からは見えにくい世界規模で起きている事象の解説本。元「エコノミスト」編集長、「日はまた沈む」などのベストセラーでも有名な日本通の筆者による作品。



雑誌掲載の新書化で、発売も2008年の本だけあって、国内の時事問題についてはあまり面白くありません。話題の中心が安倍内閣ですので。サブプライムの話題などが中心のアメリカについても同様です。

中国や韓国、北朝鮮に対する見方はやはり興味深いものがあります。日本のマスコミを通すと、どうしても情報が偏ってしまいがちですからね。

アフリカ大陸の重要性が強く主張されています。欧米だけでなく、既に新しい大国として存在感をますます強めている中国やインドにおいても、アフリカ大陸への進出が盛んになってきているようです。いま、ワールドカップが南アフリカで開催される意味も、そのあたりから読み取ることが出来るでしょう。

時事ネタは風化すると厳しいですが、視野を広げる意味では良い本だったと思います。

評価:★★☆☆☆

2010年6月12日土曜日

「超訳『資本論』 」(的場 昭弘) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

学生時代を思い出しながら読みました。「超訳」の意味は良く分かりませんが、副読本的な位置づけになるんですかね。そんなにやさしい本ではないと思います。



資本論第1巻のうち理論重視の前半でなく、現実世界に近い後半部分を主に厚く記述しているそうです。章立てそのものが原本に即しているのかと思って調べてみたら、そうでもなかったですね。

資本論をもっとやさしく解説している本はたくさんあると思います。そういう意味ではどちらかというと本物を読むための準備運動的な作品なんですかね。学生さん向きでしょうか。総括的な記述があまりないので、初心者にはかなり読みにくい本です。

社会人が気軽に手を出すというより、これから真面目に勉強しようという人のための本だと思います。読み物としては全然面白くなく、知的好奇心を刺激されるということもあまり期待しないほうがいいと思います。

評価:★★☆☆☆

2010年6月3日木曜日

『情報デザイン入門 - インターネット時代の表現術』(渡辺保史) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

情報の見せ方について考えていた折、本書が目に留まって買ってみました。古い本(2001年)ですが、特に内容が時代遅れになっているということも無く、デザイン初心者にとって分かりやすい良書だと思います。



本書曰く、情報の組織化の方法は以下の5つしかないそうです。
  1. カテゴリー
  2. 時間
  3. 位置
  4. アルファベット(50音)順
  5. 連続量
最後の連続量が分かりにくいかもしれませんが、小→大とか低→高といった程度の違いをあらわすものです。値段とか★3つの評価といったものですね。確かに思い返してみれば、なるほどたった5つに集約されるものなのかと感心しました。

iPadのユーザインタフェースが大きな話題を呼んでいますが、
GUIに代わる新しい情報のインターフェイスがいま求められていることは間違いないのではないか、と思う。
とあるように、ユビキタスという言葉がはやり始めたあたりから、キーボードとマウスに代わる何かの模索はかなり進んでいたように思います。iPadのようなデバイスが日本から生まれなかったのは残念なことです。

本書でよく出てきたセンソリウムのサイトを見てきました。流石に過去のものという感じでしょうか。本書の内容は勉強になりましたが、こういうセンスについては野暮な私には理解しにくいですね。当時にあっても同じ印象を持ったと思います。

情報過多ということはずっと以前から言われていて、既に各人がそれなりに取捨選択のノウハウを磨いてきているとは思うのですが、初心に帰るという意味では本書は参考になると思います。最近キュレーションなんて言葉も聞きますが、昔もいまも同じところをぐるぐる回っているだけのような気がしなくもありません。

評価:★★☆☆☆

2010年6月1日火曜日

『御社の「売り」を小学5年生に15秒で説明できますか?』(松本 賢一) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

刺激的なタイトルですが、中身は至極まっとうです。ポジショニング分析の結果を簡潔かつ的確に宣伝文句へ昇華するメソッドを紹介しています。ものはいいのになぜか売れない、とお悩みの方にお勧めです。



割とありがちなジャンルの本かもしれませんが、本書の特徴はマス相手よりリアルな個人との接点を重要視しているところです。自分に嘘をつかない、真摯な言葉でなければ気持ちは伝わらないのではないか。お客さんに喜んでもらえた生の声など、人と人とのつながりから生まれる喜びを、成功の起点ととらえています。

既存のマーケティング手法は認めつつも、年齢や性別からさっくりターゲットを絞る切り口に対し
この属性方式では、血の通ったターゲット像が見えてこない
と疑問を呈しています。ビジネス視点からは少し感傷的に過ぎるととらえられるかもしれませんが、TwitterやSNSなどのソーシャルマーケティングにおける肝は、まさにそういう対人的なところにあるのではないかと思います。

筆者の顧客層がどちらかというと小口の事業者なため、ケーススタディとしては若干偏りがちになっていますが、本書の精神については規模に関わらず通用する部分があるのではないかと思います。

評価:★★☆☆☆

2010年5月27日木曜日

『環境保護運動はどこが間違っているのか?』(槌田 敦) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

牛乳パックをリサイクルしている人、原発はエコだと信じている人、温暖化の原因はCO2だと疑っていない人は、一度この本を読んでみましょう。環境運動の裏に潜む自己満足や欺瞞を鋭くあばいてくれる、現代人の必読書です。



この本、もとは1992年に出版されたものです。それが1999年に文庫化し、さらに2007年に新書として再出版されました。大学時代にゼミの先生に勧められて読んで、感銘を受けたことを良く覚えています。今回書店でたまたま見かけて、久しぶりに手に取ってみました。

牛乳パックのリサイクル、ただの自己満足です。再生紙への加工は普通紙を作るよりコストがかかります。コストがかかるというのは設備投資やエネルギーが余分にかかるということ。要するに、地球全体で見ればかえって余計に環境を汚染することになるのです。

設備にも資源やエネルギーが消費されることを忘れてはいけません。原発も単体で見ればクリーンに見えますが、その準備段階で大量の化石燃料を消費します。石油一本の方がはるかに効率的。では、なぜ原子力発電はなくならないのか。それで儲けている人がいるからです。あと、プルトニウム。原発には欺瞞しか存在しません。

二酸化炭素による温暖化、確かにもっともらしく聞こえます。でも、温暖化の何が悪いのか。温暖化で海面は下がりません。空気中に含む水蒸気量が多くなり、それが循環して南極で氷になります。そもそもCO2濃度が上がり始める前からすでに温暖化は始まっていたとするデータもあります。地球の歴史上、温暖化という時期を向かえるのは珍しいことではないと知っておくべきです。

そういえば鳩○イニシアチブとかありました(笑)。いえ、笑い事じゃないですけれどね。

筆者は本書の再発行にあたり内容を吟味した結果、いくつかの注はつけたもののほぼそのままの形で出版することに決めたそうです。つまり状況は20年近くの間ほぼ変わっていないということです。無知と自己満足と欺瞞からくる悪循環。直接に利害が絡む点が見えにくいのが、環境問題の難しいところなのでしょう。

あえて本書の難点をあげれば、やはり事例などが少々古くなっている点です。ただ、要所には注もつけられていますので、安心して読んでいただいて問題ないかと思います。本書の内容は多くの方に知ってもらいたいです。

評価:★★★★☆

2010年5月13日木曜日

「だまされ上手が生き残る 入門! 進化心理学」(石川幹人) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

精神論っぽい話かと思いつつ手に取ったら、比較的真面目な科学の本でした。科学といっても、充分噛み砕かれていて読みやすいです。進化心理学という分野のお話らしいのですが、進化の過程で至った今の我々が、現代社会に生きることの根源的な問題点をあげた上で、それに適応するための心構えが述べられています。



仲良くすることが進化論的に優位な場合があること、嘘をつくことで円滑に回るもの、男女の考え方の違いについての進化論的見地からの説明、狩猟時代の特質を引きずっているがために現代社会にフィットできない人類の特性、など、なかなか興味深い話題が多かったです。

究極的な幸福とはなにかとい観点から、クオリアの話も持ち出されています。クオリアとは
快・不快や痛みや赤さなどの「自覚的な感じ」(P59)
のこと。といってもわかりにくかもしれませんけれど、興味のある向きには紫色のクオリアなどお勧めです。ライトノベルですけれど、クオリアというものを物凄く端的な形でネタにしています。

本題といえるのが最後の2章だけに集約されるので、本の構成としては若干冗長な感じもしましたが、あとがきによると前半の進化心理学の部分をしっかり抑えていないと理解できないということだそうで、言われてみればなるほどという感じです。学問的色合いが強めですが、現在の不安定な社会を自覚的に生きていくためにはぜひ読んでおきたい一冊です。

評価:★★★☆☆