2010年11月8日月曜日

日本は世界4位の海洋大国(山田吉彦) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

タイトルは少々大げさですが、海洋資源や国境問題に関する最新のトピックが、実に冷静に説明されています。一部ネトウヨ的感情論になっていないのが良かったです。



タイトルの4位というのは若干微妙で、面積だけなら6位となるそうです。4位というのは海水量という三次元的視点からのもの。それでも海洋大国という言葉に恥じない広さではあるといえます。

本書では、いわゆる海洋資源を「海底資源」、「海洋資源」、「水産資源」の3つに分類しています。海底資源は油田、水産資源はお魚。この両者は結構馴染み深い概念ですが、「海洋資源」というのが新しいですね。

海水のなかにはエネルギーやレアメタルなどが溶け込んでいるわけですが、科学技術の発展によりそれらの抽出技術が実用化の段階まで迫りつつあるそうです。この分野では日本が最先端を走っているとか。

やはり懸念は領土問題となるでしょう。地理的にみれば、日本というただ一国の存在により中国も韓国もあたかも監獄に捉えられているような状況です。P17の地図を見れば、両国が領土問題に熱心なのもある意味当然のような気がします。

領土問題について気になったのは、実効支配についての考え方です。
利用していない土地は、島とは認めないという風潮が世界にはある。排他的経済水域の主張においては、人間の居住という点が重視されているのだ。
この考え方に照らし合わせると、日本の離島政策は実にお粗末だというのが筆者の主張です。

竹島は、韓国による不当占拠からすでに60年もの実効支配が続いています。ここまでくると、いくらサンフランシスコ条約を盾にとっても、完全に日本の領土と主張するのは徐々に難しくなって来るかも知れません。

もっとも国はただ手をこまねいているだけではありません。2007年に成立した「海洋基本法」など、日本の「海」の取り組みが着実に前進しているようであるのは頼もしいことですが、こういうポジティブなことはあまり話題になりにくいのかなという気はしますね。不思議なことです。

領土問題について中韓の動きやマスコミ報道に反射神経で対応する前に、本書のような周辺知識を押さえておくことは、民度の高さを誇りたい向きの方々には大事なことではないかと思います。

評価:★★★★☆

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