2010年11月6日土曜日

プラスマイナスゼロ(若竹七海) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

葉崎市を舞台に女子高生3人が活躍するミステリ短編集。純粋なミステリだけでなくオカルトもあります。コミカルホラー(矛盾のある表現ですが)といったほうがよいかもしれません。ホノボノした雰囲気のなかにも、若竹さんならではの毒がピリッと効いています。



タイトルは要するに「良い子、悪い子、普通の子」。二次募集においてあらゆる生徒の受け皿となる葉崎山高校。お嬢様な天然系優等生「天知百合子(テンコ)」、赤毛の暴力女だけど情に厚い「黒岩有理(ユーリ)」、そして容姿、成績、家庭環境から靴のサイズまで全てが平均値の「崎谷美咲(ミサキ)」。

ありがちといえばありがちなキャラ設定なのですが、そこは人間の悪意を描くのが得意な筆者のこと。一筋縄ではいきません。といいますか、お嬢様キャラに野ぐ○させないでほしいです(^^;

一話目は幽霊の出てくるはっきりしたホラー。そっち方面の作品なのかと思ったら、残りの作品は超常現象が皆無です。ちょっとちぐはぐな気もしたのですが、これもミスディレクションでしょうか。

全てに普通という触れ込みのミサキが、基本的には語り手にして一応探偵役っぽくなっています。もっとも、あからさまな謎解きというのは少ないですが。自分で普通といってますが、ミサキも朱に交わるまでもなく相当変わり者という気がします。

葉崎市のシリーズはこれで5作目になるようですが、本書は「クール・キャンデー」の次に好きかもしれません。設定としてはものすごくストレートな青春小説のはずなのに、どことなく黒いもののブレンド具合が素敵です。

評価:★★★★☆

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