筆者の主張するところがあまりに明快なため、エッセンスだけ読み取ろうとしても退屈を感じるかもしれません。ポイントは内田和成氏の解説どおり
中途半端はだめの一言につきます。上質さか手軽さを適切に実現した成功事例と、二兎を追ったため失敗した事例が延々と紹介されていきます。
本書の面白さは、筆者の主張よりも事例紹介の豊富さにあると思ったほうが楽しく読めると思います。単純に成功した、あるいは失敗したケースだけでなく、ウォルマートやティファニーのように失敗しかけたけど軌道修正したような事例も紹介されています。
上質と手軽のどちらか一方だけを極めるのが成功の法則で、両方を同時に追い求める先に待っているのは「不毛地帯」しかないとのこと。この点、セグウェイやCOACHなどの既に失敗した事例だけでなく、たとえば中国のように将来の予測について語られている箇所もあります。
日本や韓国が「手軽さ」から「上質」に完全にシフトして成功したのに対し、いまの中国は人件費の面での「手軽さ」を維持しつつ、外国の「上質」を取り込もうとしている点に疑問を投げかけています。Kindleについても微妙な評価ですね。この予測がどう出るか、興味深いです。
「上質」or「手軽」というのは二項的でシンプルなものにみえますが、実のところはそうともいえません。手軽といっても安かろう悪かろうでは駄目で、最低限受け入れられる質の水準があります。また、テクノロジーやイノベーションにより、競争の条件自体がシフトしてしまうケースもあります。
そういった意味で、本書の単純な切り口には若干の欺瞞が入っているように感じられるところがなくもありません。ただ、現実的な問題として、難しく「上質」なマーケティング理論を理解する余裕のない私には、本書のメソッドのほうがはるかに「手軽」に指針を得られる糧になりそうだなとは思いました。
評価:★★★☆☆
0 件のコメント:
コメントを投稿