五賢帝最後の一人「マルクス・アウレリウス」。筆者がその治世に懐疑的なのは、彼が「賢帝の世紀」にカテゴライズされなかったことからも明らかですが、それでもやはり五賢帝と呼ばれるにふさわしい人物だったのだなというのが、本書を読んでの感想です。それにしても息子のコモドゥスは・・・。上巻のレビューはこちらです。
常に辺境に問題を抱えるローマ帝国において、トップが軍務に通じることの重要性は筆者が常々強調していたところ。それゆえに、自身は軍役につかず、後継者も手元において離さなかった前帝アントニウス・ピウスに対しては、治世中の善政にもかかわらず疑問符が投げかけられています。
そんななかでも、マルクスは最善を尽くしたといっていいようです。どちらかといえば文弱の徒でありながら、辺境の有事に対して自らの出陣をためらわず、お世辞にも軍事的才能に恵まれたとはいえませんが、各地の内乱には毅然として対処。彼なりのやり方で、第一人者としての責を果たしていたといえるでしょう。
なによりも、個より公を重視した厳格かつ公正な態度は、とかく非軍人を馬鹿にしがちな最前線の兵士達からも確固たる支持をかちえていたようです。不運な状況においても根気良く最善を模索する姿勢に、人々は心を打たれたのだと思います。信念のある人は強いです。
戦地で病に倒れた皇帝のあとをつぐのはわずか18歳のコモドゥス。彼を後継者として据えたこと自体は責められるものではないでしょうが、ネロしかりカリグラしかり、若くして帝位につくと碌な結果にはならない印象がありますね。
敬愛する姉から命を狙われるという不幸はあったものの、コモドゥスの失政はやはり本人の資質に帰するところが大きいのではないかと思います。自身が剣闘士として腕を振るうとか、立場的にありえません。でも、ライオンの被り物はちょっとお茶目で可愛いですが(笑)
衆目一致の後継者不在。どうも皇位争いにまつわるきな臭さが漂うなか、下巻へと続きます。
評価:★★★☆☆
2010年11月19日金曜日
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