澪と小松原の仲を進める気があるとは思っていませんでした。色々大きな軸のあるなか、筆者の野望が垣間見えたような気がします。俄然面白い展開を見せつつ、各話の作りこみも相変わらずお見事。みをつくし料理帖シリーズ第5弾です。
本巻では結構話が動きましたね。4話とも秀逸でした。以下、各話の感想です。
■ 迷い蟹 - 浅利の御神酒蒸し
「つる家」屋号のもととなった、店主「種市(たねいち)」の娘「おつる」の亡くなった事情が明らかになります。心にしっくり染み入るエンディングがお見事です。
■ 夢宵楼 - 菜の花尽くし
吉原きっての妓楼「翁屋(おきなや)」から花見の宴の料理を頼まれた澪。苦心の末に考え出した、大尽がたを唸らせる食材とは。隠れキャラみたいな「旭日昇天」が登場するとそれだけで嬉しいですね。
■ 小夜しぐれ - 寿ぎ善
澪の友人で大店の娘「美緒(みお)」に縁談が進められます。彼女の思い人を知る澪は複雑な胸中となりますが・・・。この話題はもう少し引っ張るのかと思っていたのでちょっとびっくりです。
■ 嘉承 - ひとくち宝珠
御膳奉行「小野寺一馬(おのでらかずま)」が、嫌いな菓子作りに苦心するお話し。めずらしく澪が登場しません。以前からほのめかされていた小松原の正体がいよいよ明らかになります。
小松原との仲、旭日昇天の身請け、天満一兆庵の再興と、到底かないそうも澪の願望がそれぞれに動きを見せてきました。もしかして、全部大団円にしようとしてます?ハッピーエンド好きの私には嬉しすぎる展開に、今後もますます目が離せません。
評価:★★★★☆
シリーズ一作目はこちら
2011年3月19日土曜日
2010年9月21日火曜日
今朝の春―みをつくし料理帖(高田 郁)
お店に火をかけられるやら料理のアイデアを盗まれるやら、もとの生い立ちとあわせて「艱難辛苦」の四字熟語が実によく似合うシリーズでしたが、不幸にめげず頑張る澪(みお)の前向きさのおかげか、だんだん悩みのレベルがマシになってきたような気がします。江戸時代の料理屋を舞台にした連作時代小説第4弾です。
幼馴染で吉原の頂点に位置する「旭日太夫(あさひだゆう)」、澪がほのかな恋心を抱く訳知りな貧乏浪人風の「小松原」、江戸一番との評判ながらちょっとあくどい名店「登龍楼」とのごたごたなど、このシリーズにはいくつかの軸がありますが、それぞれが少しずつ進展をみせていっている感じです。以下、各話の感想。
■花嫁御寮 - ははきぎ飯
大奥に奉公の話が出た大店の娘「美緒(みお)」に包丁を教えることになった澪。美人を鼻にかけた風だったこの娘ともすっかり友人っぽくなってしまいました。ところが、同じ読み方をする二人の名が、思わぬ行き違いを呼ぶことに。今までほのめかされる程度だった小松原の素性がちょっと詳しく明かされます。
■友待つ雪 - 里の白雪
戯曲書きの大先生にしていつも口の悪いツンデレ「清衛門(せいえもん)」先生が、「あさひ太夫」を題材に作品を書くと言い出します。あさひ太夫こと「野江(のえ)」が遊郭に入ることとなったいきさつが明かされるとともに、澪には壮大な目標が突きつけられることになります。
■寒紅 - ひょっとこ温寿司(ぬくずし)
店を手伝ってくれている「おりょう」の亭主で腕のいい大工「伊佐三(いさぞう)」に浮気疑惑が発覚します。おりょうは仕事が手につかず、わが子として可愛がる「太一」も不安げな様子に。さらにその女が直接おりょうや太一に接触してくるという・・・うーん、この話はあまり面白くなかったかも。特にオチがちょっと。
■今朝の春 - 寒鰆(かんざわら)の昆布締め
年末恒例の料理番付が今年は出ないという。澪の「つる家」と「登龍楼」で票が真っ二つに割れたためとのことで、版元から料理対決の提案がきます。気が乗らないながら引き受けた澪ですが、題材は上方出身の彼女にはいかにも不利な「寒鰆」。「究極」vs「至高」を思わせるどストレートな料理対決。どちらが「至高」かは読んでみてのお楽しみです。
それにしても、筆者はテーマとなっている料理は実際に自ら作ってみているとのこと。特に寒鰆なんかは大変だと思うんですが、凄いというか食べてみたいというか。この作品がもう少しメジャーになってくれれば、筆者監修の料理屋とか出来てくれたりしないですかね。そのときは敷居の高い「登龍楼」でなく、庶民の味方「つる家」スタイルで是非お願いしたいです。
評価:★★★☆☆
幼馴染で吉原の頂点に位置する「旭日太夫(あさひだゆう)」、澪がほのかな恋心を抱く訳知りな貧乏浪人風の「小松原」、江戸一番との評判ながらちょっとあくどい名店「登龍楼」とのごたごたなど、このシリーズにはいくつかの軸がありますが、それぞれが少しずつ進展をみせていっている感じです。以下、各話の感想。
■花嫁御寮 - ははきぎ飯
大奥に奉公の話が出た大店の娘「美緒(みお)」に包丁を教えることになった澪。美人を鼻にかけた風だったこの娘ともすっかり友人っぽくなってしまいました。ところが、同じ読み方をする二人の名が、思わぬ行き違いを呼ぶことに。今までほのめかされる程度だった小松原の素性がちょっと詳しく明かされます。
■友待つ雪 - 里の白雪
戯曲書きの大先生にしていつも口の悪いツンデレ「清衛門(せいえもん)」先生が、「あさひ太夫」を題材に作品を書くと言い出します。あさひ太夫こと「野江(のえ)」が遊郭に入ることとなったいきさつが明かされるとともに、澪には壮大な目標が突きつけられることになります。
■寒紅 - ひょっとこ温寿司(ぬくずし)
店を手伝ってくれている「おりょう」の亭主で腕のいい大工「伊佐三(いさぞう)」に浮気疑惑が発覚します。おりょうは仕事が手につかず、わが子として可愛がる「太一」も不安げな様子に。さらにその女が直接おりょうや太一に接触してくるという・・・うーん、この話はあまり面白くなかったかも。特にオチがちょっと。
■今朝の春 - 寒鰆(かんざわら)の昆布締め
年末恒例の料理番付が今年は出ないという。澪の「つる家」と「登龍楼」で票が真っ二つに割れたためとのことで、版元から料理対決の提案がきます。気が乗らないながら引き受けた澪ですが、題材は上方出身の彼女にはいかにも不利な「寒鰆」。「究極」vs「至高」を思わせるどストレートな料理対決。どちらが「至高」かは読んでみてのお楽しみです。
それにしても、筆者はテーマとなっている料理は実際に自ら作ってみているとのこと。特に寒鰆なんかは大変だと思うんですが、凄いというか食べてみたいというか。この作品がもう少しメジャーになってくれれば、筆者監修の料理屋とか出来てくれたりしないですかね。そのときは敷居の高い「登龍楼」でなく、庶民の味方「つる家」スタイルで是非お願いしたいです。
評価:★★★☆☆
2010年8月10日火曜日
銀二貫(高田 郁)
江戸時代中期、大坂天満の寒天問屋が舞台となります。タイトルの「銀二貫」というキーワードが最後までぴんと来なかったのですが、お話しのほうは面白かったです。寒天作りのディテールが凄い。
銀二貫は金に直すとざっと三十三両とのこと。100万円くらいな換算になるでしょうか(参考)。大火の難を逃れた寒天問屋「井川屋」の主「和助」は、大坂天満宮に寄進するために調達したその大金を、仇討ちで親を殺された「鶴之輔」を救うために投げ出します。
実は、この出だしのロジック自体があまりよく分からなかったのですが・・・鶴之輔の親を殺した武士も理由あってのことで、息子にまで手をかけるつもりはなかったわけですから。他にも何度か「銀二貫」のキーワードが出てきますが、何かこじつけな感じがなくもありません。
本書のキーワードとして「天満宮」と「大火」があります。当時の大坂の商人達にとって、天満宮への信心はとても大切なものだったそうです。大火の後も寄進できる余裕のあった井川屋がそれをしないことは、白い目でみられる原因ともなります。和助は番頭の「善次郎」に苦い顔をされ、丁稚となった「鶴之輔」改め「松吉」は長いこと居心地の悪い思いをすることとなります。
大火は人生を大きく狂わせてしまうため、物語のエッセンスとしては使い勝手が良いのでしょうけれど、ヒロインの「真帆」はとても可哀想です。高田郁さんの作品って、いつも女性キャラがめちゃくちゃ不幸な生い立ちを背負っている印象がありますね。もっともこんなに重い設定でも、文章やストーリーにどこか爽やかな感じを漂わせるのが筆者の凄いところです。
多少設定に気になるところはあるものの、ストーリ自体は苦労を乗り越えて成功を勝ち取るという王道で、読み味は抜群にすばらしいです。これはこれでもちろん良いのですが、ヘビーな話しの苦手な私としては、たまには不幸でないヒロインも書いてほしいなという気もします。
評価:★★★☆☆
関連レビュー:
「出世花」(高田 郁)
銀二貫は金に直すとざっと三十三両とのこと。100万円くらいな換算になるでしょうか(参考)。大火の難を逃れた寒天問屋「井川屋」の主「和助」は、大坂天満宮に寄進するために調達したその大金を、仇討ちで親を殺された「鶴之輔」を救うために投げ出します。
実は、この出だしのロジック自体があまりよく分からなかったのですが・・・鶴之輔の親を殺した武士も理由あってのことで、息子にまで手をかけるつもりはなかったわけですから。他にも何度か「銀二貫」のキーワードが出てきますが、何かこじつけな感じがなくもありません。
本書のキーワードとして「天満宮」と「大火」があります。当時の大坂の商人達にとって、天満宮への信心はとても大切なものだったそうです。大火の後も寄進できる余裕のあった井川屋がそれをしないことは、白い目でみられる原因ともなります。和助は番頭の「善次郎」に苦い顔をされ、丁稚となった「鶴之輔」改め「松吉」は長いこと居心地の悪い思いをすることとなります。
大火は人生を大きく狂わせてしまうため、物語のエッセンスとしては使い勝手が良いのでしょうけれど、ヒロインの「真帆」はとても可哀想です。高田郁さんの作品って、いつも女性キャラがめちゃくちゃ不幸な生い立ちを背負っている印象がありますね。もっともこんなに重い設定でも、文章やストーリーにどこか爽やかな感じを漂わせるのが筆者の凄いところです。
多少設定に気になるところはあるものの、ストーリ自体は苦労を乗り越えて成功を勝ち取るという王道で、読み味は抜群にすばらしいです。これはこれでもちろん良いのですが、ヘビーな話しの苦手な私としては、たまには不幸でないヒロインも書いてほしいなという気もします。
評価:★★★☆☆
関連レビュー:
「出世花」(高田 郁)
2010年5月8日土曜日
「出世花」(高田 郁)
死体を清めて美しく送り出す、江戸時代の三昧聖を描く連作短編。父に死なれた少女「お縁」が自らの決断により屍洗いとなることを望み、様々な形の死と向き合うなかで成長していくお話です。
同作者の八朔の雪
から始まる「みをつくし料理帖」のシリーズがかなり気に入ったので、その延長で手にとってみたのですが、こちらのほうが更に好みかもしれません。
屍洗いという死と直接向き合う仕事であるだけに、話しの内容は結構重いです。でも、主人公を囲む人たちがいい人ばかりのせいもあってか、後味は決して悪くない仕上がりとなっています。
表題の「出世花」は小説NON短編時代小説賞の奨励賞を受賞した作品だそうです。筆者はかつて漫画の原作をしていたそうで、まったくの素人ではなかったようですが、それでも2話、3話と話しを連ねるたびに、なるほどこなれてくる印象を受けます。最終4話目では涙腺が緩みました。
ただ感傷を誘うだけでなく、ミステリ要素も散りばめられているのがまさに私の好みにドンピシャです。検視などの発達していなかった時代、死体をよく目にし、しかも各々の死体の状態を書き留めておく勤勉さを持った主人公は、しばしばお役人をお助けすることになります。
もう少しドロドロした演出のほうが専門的な評価は高まるのかもしれませんが、エンターテイメントが好きな私としては、まさにぎりぎりのバランスの上に立つ珠玉の作品といえます。まだ1冊しか出てないようですが、是非ともシリーズ化を待ちたいところです。
評価:★★★★★
--
こちらから他のレビューが見れます

にほんブログ村
同作者の八朔の雪
屍洗いという死と直接向き合う仕事であるだけに、話しの内容は結構重いです。でも、主人公を囲む人たちがいい人ばかりのせいもあってか、後味は決して悪くない仕上がりとなっています。
表題の「出世花」は小説NON短編時代小説賞の奨励賞を受賞した作品だそうです。筆者はかつて漫画の原作をしていたそうで、まったくの素人ではなかったようですが、それでも2話、3話と話しを連ねるたびに、なるほどこなれてくる印象を受けます。最終4話目では涙腺が緩みました。
ただ感傷を誘うだけでなく、ミステリ要素も散りばめられているのがまさに私の好みにドンピシャです。検視などの発達していなかった時代、死体をよく目にし、しかも各々の死体の状態を書き留めておく勤勉さを持った主人公は、しばしばお役人をお助けすることになります。
もう少しドロドロした演出のほうが専門的な評価は高まるのかもしれませんが、エンターテイメントが好きな私としては、まさにぎりぎりのバランスの上に立つ珠玉の作品といえます。まだ1冊しか出てないようですが、是非ともシリーズ化を待ちたいところです。
評価:★★★★★
--
こちらから他のレビューが見れます
にほんブログ村
登録:
投稿 (Atom)

