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2011年6月16日木曜日

邪悪の家(アガサ・クリスティー) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

なんとも評価の難しい作品ですが、ポアロ嫌いな人にはお勧めです。9割くらいまで読んだ時点でビッグ4並みの駄作だと思っていたら、最後の最後で実にクリスティらしい怒涛の展開が待っていました。



とにかくポアロが後手に回り続け翻弄されまくるので、アンチポアロの方には溜飲が下がるのではないでしょうか。名探偵の面影一片もなし。いつもながらのちょっと鼻につく自画自賛が、愛嬌でなくうっとうしく感じられてしまいます。

ヘイスティングズが登場すると、ポアロのそういう側面が際立つような気がしますね。ポアロ自身にとっては肝胆相照らす無二の親友だとしても、読者にとっては彼の負の側面を写す出来の悪い鏡のような存在という気が・・・

真犯人については私もなんとなく感づいていましたが、動機やその他の周辺事情が一気に押し寄せてくる最終盤の展開はお見事でした。途中のグダグダだった捜査過程を一気に吹き飛ばしてくれたと思います。

ただ、正直この話は「ポアロ最大の失敗」とサブタイトルをつけても良いくらい、ポアロにとって最初から最後まで冴えない事件でした。殺人事件にしたところで、結局ポアロに責任の帰するところがかなり大きかったように思いますし。

以下、ネタバレになるので既読の方のみ反転でお願いします。



ポアロが裏をかかれまくっている時点で、犯人はあの人意外ありえないなとは思っていました。ただ、動機については全然想像がつかなかったので、真相についてはかなりびっくりさせられました。

しかし、マギーの本名についてはフェアといって良いのでしょうかね。一応伏線らしきもののも仕込まれているとはいえ、人によっては頭にきてもおかしくないレベルと思います。私は「フェア」にあまりこだわらないので素直に楽しめましたが。

本書で感心したのは、クライマックスでの畳み掛け方。遺言状の件、窓ガラスの不審人物の件、そして事件の真相が次々と個別に明らかになっていく展開はお見事としか言いようがありません。

それぞれの状況が事件を複雑にしてしまう手口はクリスティ十八番のパターンといって良いと思いますが、本作でもそれが見事にはまったように思います。最後の腕時計の演出もお見事でした。



話の展開はいまいち、謎解きは秀逸という、実に評価の難しい作品です。ただ、個人的にはトリックのためだけにミステリを読んでいるわけではないので、あまり高い点数はつけられないかなという気がします。できれば格好良いポアロが読みたいのです。

新訳版も最近出ているみたいですね。

本書の訳ではヘイスティングズの口調などちょっと気になるところもあったので、新しいほうについても機会があれば目を通してみたいです。できればタイトルも創元推理文庫版の「エンド・ハウスの怪事件」に戻して欲しかったかなぁ・・・

評価:★★☆☆☆

2011年4月23日土曜日

香菜里屋を知っていますか(北森鴻) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

ビアバー香菜里屋を舞台にしたミステリ短編集第4弾にして、シリーズ最終作です。ラストに相応しい常連達のエピソードが綴られていき、鳥肌が立ちそうなフィナーレになるかと思いましたが、肝心の最終話だけはあまり好みに合わなかったかもしれません・・・



花の下にて春死なむ」から始まる本シリーズは、特に愛着を持っておられるファンも多いのではないかと思います。なんといっても香菜里屋のマスター「工藤」による料理メニューの数々が素晴らしい。

私が北森作品のなかで一番好きなのは「メイン・ディッシュ」なのですが、こちらも料理を主題にしたもの。なんとなく料理の薀蓄が語られるだけでテンションが上がるといいますか、そういうところが私のつぼみたいです。

シリーズの完結として位置づけられる本書ですが、各エピソードの内容も最終巻に相応しいものとなっています。とりわけ私が印象に残ったのは2話目の「プレジール」。ああ、あの人が・・・と感慨が溢れるようでした。

そして、ラスト直前の第4話では「香菜里屋」という店名の由来も明かされ、非常に盛り上がる気持ちで第5話を向かえたのですが・・・うーん、この最終話はちょっと私には合わなかったです。

ネタバレになりそうなので一応反転で。

私は「蓮杖那智」シリーズも「冬狐堂」シリーズも大好きなのですけれど、二人がコラボする作品は少々苦手なのです。ちょっときつめのスーパーウーマン二人が、お互いに認め合ってる風なのがなんとなく胡散臭く感じられて・・・

で、この最終話は二人ともが登場、というよりゲストで無くメインを掻っ攫ってしまっているのがとても受け入れがたかったのです。工藤が不在という状況はまだよいにしても、せめて香月なり常連達なりによる解決をみせてほしかったかなと。

上記の理由から、個人的には少し残念な感じのする終幕でしたが、同じ理由から本書が好きと感じられる方もたくさんおられるでしょうね。なにしろ北森ファンとしては出し惜しみの無い、オールキャストの展開ですから。

ネタバレ終わり

ちなみに本書には未完の「双獣記」という作品があわせて収録されていますが、こちらのほうは私は読んでいません。熱心なファンであれば読むべきなのでしょうけれど、なんだか切なくなってしまいそうなので。

最終巻としては若干の不満を感じたところもありますが、その不満も愛着故ということで、シリーズ全体を通してみれば非常に質の高い読書体験を提供していただけたと思っています。筆者には感謝の念に堪えません。

北森作品の読み残しも本書で最後になるでしょうか。さびしい限りです。

評価:★★☆☆☆

関連作品:



2011年4月12日火曜日

かばん屋の相続(池井戸潤) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

銀行の支店を舞台にしたミステリ短編集。まさに筆者の原点といったところでしょうか。苦い後味の作品が多く、いかにも大人向けな感じです。ミステリ分はあまり期待し過ぎないほうが良いかもしれません。



小さな信用金庫や地味な支店などの泥臭い融資業務が主なテーマとなっています。どの話もアイデアというより抒情で読ませる、なかなか渋い味わいの構成です。

私も就職活動で地方銀行に内定をもらったことがあり、結局迷った末にIT系の企業を選んだのですが、本書の話も私のもう一つの可能性だったかもしれないなどと考えると、なかなか感慨深いものがあります。

もっとも、悲哀や鬱屈を感じさせる作品のほうが多いので、本書を読んで銀行業に憧れを持つ人は少ないかもしれません。そういう影の部分も傍目でなら格好いいと思うのですが、自分がやりたいかとなるとちょっと。

その点は我らがIT業界も同様で、ブラックな側面ばかり取り上げられがちですが、実際のところはどんな仕事にも楽しさはやりがいはあるんじゃないかと思うんですけどね。

正直なところ、ハッピーエンド好きな私としては苦手なテイストの作品が多かったですが、4話目「芥のごとく」や5話目「妻の元カレ」などは、かなりぐっと迫るところのある、質の高い作品だったと思います。

表題作の6話目「かばん屋の相続」は、明らかに一澤帆布がモデルですね。話の仕掛けとしては面白いですし、割と溜飲の下がる結末ではありますが、ちょっと設定的に安直だった気もしないでもありません。

ミステリとしての仕掛けについてもあまりピンと来ない作品が多かったですが、哀愁漂う大人の味が好きな方や、銀行における支店業務の雰囲気を知りたいかたには良い作品ではないかと思います。

評価:★★☆☆☆

2011年3月28日月曜日

シューカツ!(石田衣良) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

主人公たちがマスコミ志望のハイソなグループなので、渦中の人が読むと苛立つこともあるかもしれませんが、就職活動における苦しさの本質というのは、私がやってた頃と変わらないなという気もしました。



就職活動なんてどんなマゾな人がするのかという感じですが、実際には多数の学生が洗礼を受けることになるわけです。私のときも就職氷河期真っ只中。社会人になるってこんなに厳しいことなのかと当時は思いました。

ただ、私の苦しさは自己分析の甘さや身の程を知らなかったことからきていたように思います。何しろ周りの先輩や同期がみな理系か公務員試験組みだったこともあり、就職活動の本質を悟るまでに結局30社ほどかかってしまいました。

その点、本書の主人公「水越千春(みずこしちはる)」たち鷲田大学生7人のグループは準備万端です。大学3年に入った早々に就活のためのプロジェクトチームをたちあげます。それでも苦労するのは、最難関のマスコミ志望だから仕方ありません。

グループの中でも明暗ははっきり分かれます。思うにいくら準備をしっかりしていても、本人の素養を超えたところでの勝利を得るのはかなり厳しいことなのですね。頑張ったからといって報われるとは限らない世の中です。

小説のでき自体はお世辞にも良いといえないように思います。6章だてのうち、本格的に就職活動に突入する最終章以外は読んでるのがしんどかったです。プロジェクトチームもなんだか微妙な感じでしたし。

あまり多くを期待しなければ本書から得られるものもそれなりにあるのではないかと思います。見栄を張られるのが一番痛々しいという採用側の視点は、割と普遍的な教訓になるのではないでしょうか。

準備はやはりそこそこしておくべきです。そして自分の適性をわきまえて見栄を張らない。それだけで就職活動はぐっと楽になると思います。もちろんあえて茨の道をいくのも一つの選択ですけれど、私はもう一度やれといわれてもやりたくありません。

評価:★★☆☆☆

2011年3月24日木曜日

ゴーストハント3 乙女ノ祈リ(小野不由美) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

あくまで旧版うろ覚えの状態で読んだものの感想ですが、真相がわかってる分ちょっと退屈だったかもしれません。ディテールが細かくなっているのが逆効果だったような。ただ、面白くなるのは5巻からなんですよね。もう少し我慢です。



新キャラが何人か登場しますけれど、シリーズ的にそれほど重要な人物はでてきません。ただ、これから麻衣と親交を深めることになる友人たちの輪郭は、旧版よりはっきりした印象があります。

本書のシリーズ中における位置づけがいまいち曖昧なんですよね。実は4巻についても同様のことがいえます。学園もののくくりで1冊にまとめてもらっても良かったくらいです。

ただ、麻衣の成長のあとは一応見られます。前巻でも片鱗を見せていた能力が徐々に本格化していきます。逆に、本書でカタルシスを感じられたのはそこくらいでしょうか。

旧版を読んだときにはそれなりに真相に意外性を感じたのですけれど、改めて読み返してみると結構あからさまですかね。というかイラストが怪しすぎて犯人一発でばれてしまう気がするんですが(^^;(ネタバレ反転)

散々文句言ってますが、本書も怖いことは怖いです。霊やら超能力やら盛りだくさんですが、結局一番怖いのは人間だったという、いい意味で一番嫌なパターンです。

予備知識無しで読めば結構楽しめそうな気もするのですが、本書を若干退屈に思われた方も、できれば5巻まで我慢いただきたいです。本シリーズは一話完結に見えて、実は全7冊の大長編と思っていただいたほうがよいでしょう。

評価:★★☆☆☆

2011年3月22日火曜日

少年陰陽師 異邦の影(結城光流) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

少女向け人気シリーズの一般文庫化ということで手にとって見ました。なるほど設定や話の作りはしっかりしていますが、この一冊だけだと少しもやもやが残ります。調べてみたら、内容的には3巻まででワンセットのようですね。次巻以降に期待です。



安倍晴明の孫にして陰陽師見習いの少年「安倍昌浩(まさひろ)」が、祖父の式神「紅蓮(ぐれん)」とともにあやかし退治に挑みます。

現在13歳の設定とのことなので少年でいいのですが、今後「青年陰陽師」とか「中年陰陽師」とかにジョブチェンジしていくんでしょうか。

才能を秘めながらもまだまだ未熟という、小説の主人公としては鉄板なキャラクターですが、それにしても本書では紅蓮や晴明に助けられすぎな気もします。ちょっと消化不良な感じです。

晴明の孫バカぶりは、ほほえましくてよいですね。好きな子をいじめる少年のごとく、色々な難事を昌浩に無茶振りすることで彼は鍛えられていくようです。

ヒロインは藤原道長の娘「彰子(あきこ)」ということでよいのでしょうか。実在の人物ですよね。うーん、ヒロインとして成り立つのでしょうか。ひょっとしてNTR?本書ではほんの顔見世程度の登場なので、二人の関係がどう展開するのか楽しみです。

昌浩は架空の人物のようですが、父の「吉昌(よしまさ)」は実在していたようなので、今後他の兄弟や従兄弟たちも出てくると面白くなってきそうですね。とりあえず3巻まで頑張って読んでみようと思います。

評価:★★☆☆☆

2011年3月13日日曜日

特急便ガール!(美奈川 護) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

専務をぶん殴って一流商社をやめた女主人公「吉原陶子(よしはらとうこ)」の男らしさが実に良いです。脇キャラたちも味があって作品の雰囲気は文句なしなのですが、陶子の「特殊能力」をどうとらえるかで、作品への評価は分かれそうです。



超能力っぽいものがでてくる点に少し躊躇していたのですが、設定としては超能力というよりファンタジーっぽいです。4話構成のなかで徐々に能力の全貌が見えてくるあたり、なかなかいい感じの話し作りだったと思います。

ただ、登場人物も設定もとても魅力的なだけに、特殊能力に頼る必要があったのかなという気が個人的にはします。うまくすれば有川浩さんみたいな話になりそうなんですけどね。

リアルな部分の話も特殊能力がらみのエピソードもそれぞれに質が高いのが、逆に作品の雰囲気をちぐはぐにしている印象です。パーツは優れているのに、組み立ててみたらバランスが悪かったという。

個人的に本書で一番好きなのは、初っ端の入社試験の話です。「さおりん」の素性に関するエピソードも、ミステリチックでよかったですね。どちらも全く特殊能力が絡みません。変な能力がなくても、素で十分面白いんです。

大人なキャラ萌えやいい話系が好きな方にはお勧めです。デビュー作と比べて作品の雰囲気もずっと私好みになっていたので、今後に期待したいです。次は超能力無しの作品が読みたいですね・・・

評価:★★☆☆☆

2011年2月26日土曜日

万能鑑定士Qの事件簿VIII(松岡圭祐) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

莉子が故郷の危機を救うために台湾出張。展開的にはいつも通りな感じで面白かったですが、流石にそれはないんじゃないかという設定もちらほら。まあ、このシリーズは無理筋を突っ込んだら負けですけど(^^;



水不足で悩む故郷、波照間島。海水を濾過するだけで真水にするという夢のような装置を12億円かけて購入しようとしますが、いかにも胡散臭げな技術に対して、莉子が旧友二人とともに裏を取りに動き出します。

今回は莉子のほかにも綺麗どころがたくさん登場してなかなか華やかな雰囲気です。特に現地ホテルに勤める通訳の美玲さんが良い味出してますね。しかし、アンパンマンの件は同じ男性として許せません!(笑)

故郷に戻った莉子の純朴な雰囲気も良いですが、初めて訪れた台湾におけるスーパーレディぶりも相変わらずです。絶体絶命を思わせる状況からの鮮やかな逆転劇もお見事でした。

ただ・・・無理な設定はいつものことですが、今回はあまりに無理が過ぎるような気もします。予算の1/3もの大金をそんなに即決で支払い決めちゃってますし、東大教授が胡散臭い技術をあっさり妄信し過ぎですし、SIMの件とか電話で地元警察に誤認させた件とか、気づかないなんてあり得ないですし(ネタバレにつき反転してみてください)。

無理があるのはいつものこととはいえ、今回はちょっとあまりにあれな感じもしてしまいました。ただ、そもそもこのシリーズは「突っ込んだら負けよ」ゲーム的なところがあるので、単に今回は私の負けというだけのことなのでしょう(^^;

評価:★★☆☆☆

2011年2月22日火曜日

ローマ人の物語〈36〉最後の努力〈中〉(塩野七生) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

コンスタンティヌス帝の登場。混乱を実力で収めた立派な皇帝だとは思いますが、先からの混乱でローマらしさがすっかり失われてしまい、読んでてあまり楽しくはないですね。我々が帝政と聞いてイメージする体制にどんどん近くなっています。



前回レビューでは触れませんでしたが、先のディオクレティアヌス帝により四頭政というものが始められています。国境のあちこちが破られたことに対応するため、帝国を東西二分した上で、それぞれに正帝と副帝を設けるというもの。状況的にやむをえなかったとはいえ、結局ちゃんと機能したのは一代だけということになりました。

四頭といっても、一応東の政帝が最上位とされていました。その地位に名実ともに明らかな第一人者であるディオクレティアヌスが就いていたからこそ、うまく回っていたのでしょう。ディオクレティアヌスの引退とともにあっという間に崩壊してしまいました。その混乱を収めたのがコンスタンティヌス帝です。

コンスタンティヌスは西の正帝の長男とはいえ、先妻の息子ということもあったため、後継者としてはそれほど有力な位置にいたわけでもなかったようです。

ただ、もともとの実力と声望に加え、父親の死に際にちょうど傍らで将軍職を務めていたタイミングがよかったとのこと。軍事政権になってからの後継者選定は、現場主導というよりその場の雰囲気といったほうが近いですから。

ディオクレティアヌスが約20年、そしてコンスタンティヌスが約30年の在位となります。その前までの皇帝がすぐに入れ替わる混乱期と比べて、国状はそれなりの安定を見せたようです。ただし、軍事費増大、職業固定、象徴としてのローマ軽視。重苦しい雰囲気はますます強まっていきます。

そこにキリスト教発展のきっかけがあったのでしょう。コンスタンティヌスといえばキリスト教の公認で有名ですが、このような世情が背景にあったことをわかっていないと、なんとも唐突に感じられますね。受験時代のもやもやが今頃晴れた感じです(^^;

評価:★★☆☆☆

2011年2月16日水曜日

死をもちて赦されん(ピーター・トレメイン) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

フィデルマシリーズの邦訳第6弾ですが、原著では本作が長編一作目となるので、オリジナルに忠実に読むのであれば、本書から入るのもありかと思います。なんといっても見所はフィデルマとエイダルフの出会い。当初のギクシャクした間柄から徐々に打ち解けていく様子がなんとも素敵です。



邦訳のうち3作までは読んでいましたが、人間関係でわからないところも多かったので、本来のシリーズ第一弾たる本書はまさに待ちに待ったといったところです。ただし翻訳の順番に関しては、訳者の思惑が正しかったのかなと認めざるを得ないというのが本書を読み終えての感想です。理由は二点。

一点目は、あとがきにもある通り本書の舞台がアイルランドではないこと。本シリーズ最大の特色は、古代アイルランドの世相を描いているところにあると思います。ブリテン(イギリス)を舞台にローマ派とケルト派の両キリスト教派が激論をぶつける様子は、歴史的観点からは大変興味深いのですが、シリーズの特徴が十全に発揮されているとは言いがたいでしょう。

二点目は、言いにくいですがミステリそのものとしての質の問題。フィデルマシリーズの長編については2作を既読ですが、真相の意外性やサスペンス的な展開の妙については、両作とも本書より明らかに勝っていたように感じられます。また、王妹たるフィデルマの権威も、外国が舞台とあってはあまり活かしきれていません。

もっとも、フィデルマとエイダルフが出会うエピソードは、やはり良いです。二人の関係が友人の延長にすぎないのか、あるいは恋愛模様に発展する色合いを見せるのかが、本書を読むことで明らかになったように思います。どっちなんだというところは、ご自身でお確かめいただいたほうが良いでしょう。

本書における「教会会議(シノド)」とは実際に歴史上存在するイベントなのだそうです(ウィットビー教会会議-Wikipedia参照)。史実における大イベントの裏でうごめいていた事件という形で、フィデルマたちの活躍が描かれています。しかし、登場人物のどこまでがフィクションでどこまでが実在の人物なのでしょう。

ケルト派とローマ派ということで、フィデルマとエイダルフはいわばロミオとジュリエット的な立場にあります。そのため、この二人が本格的にコイバナを展開することはないのかと思っていたのですが、その辺りの展開についてのヒントも本書のなかにあるようですね。本書を念頭に既刊も再読してみたいなと思いました。

評価:★★☆☆☆

ピーター・トレメインの関連レビューはこちら

2011年1月30日日曜日

琥珀のマズルカ(太田忠司) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

現代ファンタジーとでも言うのでしょうか。あらすじが説明しにくいのですけれど、特異な設定を手堅く纏め上げた小粋な連作短編集です。流石はベテラン作家といった手際ですが、ちょっとまとまりすぎの感もなくはないかも。



警察や医者の手に負えない状況で頼られるのが「夢追い」の「マズルカ」です。基本は事件が起こるたびに駆け込まれる「ドラえもん」パターンですが、一連の事件の背後にはマズルカが追っているある人物が黒幕として動いています。

魂の離脱が医学的に認められた世界のお話となります。症状は2つ。

一つは魂が離れかけた「離魂(りこん)」という状態で、これを治せるのが「整魂師(せいこんし)」。霊感みたいな素養が必要で、語り手ポジションの刑事「桃内大輝(ももうちだいき)」がこの素養の持ち主です。

二つ目は魂が迷子になってしまう「魂睡(こんすい)」という状態で、これは「夢追い」と呼ばれる人に探し出してもらわなければなりません。マズルカはこちらにあてはまります。

ファンタジックな設定ではありますが、警察小説の体をなしているため、どちらかというと渋めの世界観です。マズルカは普段バーでピアノを弾いていて、警察への対応にも微妙にクールでそれっぽい感じ。

整魂師の両親を持つためいいように使われている桃内をはじめ、魂の世界でのマズルカのパートナー「琥珀」、それに謎めいた背景をもつ酔いどれ少年、自称マズルカのマネージャ「ケイ」など、サブキャラもなかなか魅力的で良いです。

基本的にミステリではないと思いますが、ミステリ風の構成ではあります。このあたりは筆者の本領発揮というところでしょうか。特に第3話では「素人探偵」なるものが出てきます。彼は他の作品で出てくる人物なのですかね?結構よさげなキャラなのですが、少なくとも本書では使い捨てです(笑)

ユニークな設定を見事に纏め上げた完成度の高い作品で、解決もなかなかお見事。ただ、ラスボスはもう少し強そうな感じでも良かったかなという気がします。全体的にまとまりすぎな印象はなくもないですが、そのぶん安心して読める作品ということは言えるかと思います。

評価:★★☆☆☆

2011年1月10日月曜日

レイヤード・サマー(上月司) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

れでぃ×ばと!」作者によるタイムトリップSFです。筆者の萌えより話作りの方を評価している私としては、なかなか美味しい作品でした。



最近の筆者の作風からすると、時間SFとは意外な方向性と思われる方もいらっしゃるかもしれません。「カレとカノジョと召喚魔法」からのファンとしては原点に戻ったと言う感じですね。

行き倒れているところを助けた彼女「流堂庵璃(るどうあんり)」は、銀色の長い髪にルビーのような紅い瞳をし、そしてなぜか主人公「黒瀬涼平(くろせりょうへい)」のことを知っている未来人でした。

このほかにもいくつかの「謎」をポンと投げかけて話を引っ張っていくスタイルは、いかにもミステリーチックで私の好みです。幼馴染みの「茜野々子(あかねののこ)」や親友「高円寺忠文(こうえんじただふみ)」に敵役の「ハル」、登場キャラたちもそれぞれ個性が立っていて魅力的です。

時間SFとしての設定は、私があまり考えて読んでいないせいもありますが、少し難しいような気がしました。要するに(1)未来から過去へ来てもそれは平行世界となる→よって過去を改変しても未来は変わらない(2)同じ時間軸に同一人物は存在できない、以上の2点がポイントとなるでしょうか。

ストーリーとしては結構好みの展開だったのですけれど、どうも伏線がまだ色々残されたままでいるようです。ちょっともやもや感が残っているのですが、あとがきを読んだところでは筆者も同様に感じていらっしゃるようですね。



以下、少しネタバレが入るのでご注意。反転してみてください。



階層間移動ですが、庵璃が敢えて説明しなかったので、実は矛盾があります。(あとがきより)

「矛盾」とあるのでちょっと違うかもしれませんが、ラストで涼平が庵璃を引き止めていたら、これから来るはずだった17歳の庵璃はどうなってしまうのでしょうか。同一時間軸には2重に存在することはできないはずです。そうすると未来は変わる?




ネタバレ終了。



本書はかなり苦めのエンディングとなっていますが、そもそも時間を跳んできた過去は平行世界だという設定のため、どう転んでももう一つの世界で起きた悲劇は救われないと言うジレンマを本質的に抱えています。そのあたりをうまくクリアするためにも、上月さんはなんとしても続巻を出したいと思っていることでしょう。

とにかく本巻だけでは評価がとても難しい作品。このままでは後味がラノベにしてはヘビー過ぎる感じなので、私もシリーズ化を激しく希望したいです。ただ、電撃でこのSFっぽい小理屈ストーリーが通用するのかどうか・・・期待しています。

評価:★★☆☆☆

2010年12月22日水曜日

叫びと祈り(梓崎優) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

このミス3位をはじめ、新人でありながら各ミステリランキングの上位を占めた話題のミステリ短編集。外国を舞台にした雰囲気ある舞台設定に加え、SFというかホラーっぽい要素も入り混じり、なんとも独特な世界観を作り上げています。専門筋の評価が高くなるのもわからなくはありません。



世界各地を取材して回る雑誌記者「斉木」が主人公となります。一応彼が探偵役ということになりますが、それほど名探偵っぽい感じではありません。どちらかというと巻き込まれがたで、彼が出くわすのは「事件」というより「困難」です。

本書の特徴のひとつは、斉木が取材して回る各地域の文化や風情がミステリに色濃く反映している点です。アフリカの砂漠やらロシア正教の教会やらアマゾンの奥地やら、それらの舞台がミステリの材料として実に巧みに活かされています。

作風としてはいかにも創元系っぽいなという感じです。ミステリファンが好みそうな雰囲気ある作品。ただし、それだけにはとどまらない、一風変わった隠し味が各話のラストで待っています。ちょっとアンフェアな感もあるため評価は分かれそうですが、良くも悪くもこの部分が本書の強烈な個性となっています。

もっともその個性の部分、私としてはちょっと苦手な感じがしました。文体についても読みやすいとはいいくにですね。文章が下手ということは決してないのですが、説明されたシチュエーションが頭のなかに入ってきにくいなという印象が常にありました。

佳作といわれれば同意できるのですが、各種のミステリランキングで上位に入っているのは、個人的には少し不思議な感じもします。確かに新人さんの作品としては良くできていると思うのですが・・・

ただ、ミステリ玄人の方々が本書を高く評価したがる気持ちもわかるような気がします。なにしろ本格ミステリの枠にありながら非常なユニーク性を併せ持っているため、その部分が変にこなれてしまうのはもったいないと思えてしまうのかもしれません。確かに稀有な才能という点では全く異論ありません。

キャラ読み、ストーリー読みの私としては、斉木にもう少し色がついてくると嬉しいかもしれません。本書ではちょっと透明人間っぽかったので。もっとも、そうなると作品のイメージががらっと崩れてしまいそうな気もするので、なかなか難しいところですね。

評価:★★☆☆☆

2010年12月20日月曜日

群衆リドル Yの悲劇’93(古野まほろ) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

初の古野まほろ作品。登場人物に感情移入しにくくて、前半はちょっとしんどかったのですが、人が死に始めてからはスピーディーな展開でよかったです(嫌な言い方だけど)。古き良き本格ミステリといったところでしょうか。



東京が帝都だったり、時代が1993年だったりするのは、他の作品と共通する世界観に起因するものでしょうか。他にも裏設定らしきものがちらほら見え隠れして、若干もやもやが残るところはあります。

そういう意味で初めて読む筆者の作品としてはあまり相応しくないのかもしれませんが、話の骨格を阻害するほどのものではありません。少なくともミステリの骨子となる部分については違和感なく楽しめました。噂に聞く当て字やルビなども、特に変わったところなくとっつきやすい感じです。

閉ざされた館で人が次々と殺されていき、そして読者への挑戦状。作風自体も'93という時代背景を意識したものになっているのですかね。いかにも90年代ミステリといった趣で、好きな人にはたまらないのではないかと思います。

ちょっと癖のある探偵役には賛否が分かれそうな気がします。私はちょっと苦手かも。肝心のミステリネタについても色々無理があるような気はするものの、ミステリ的お約束の範囲内には収まっているのではないかと思います。

最近はすっかりキャラ重視、ストーリー重視になってしまっているので、もう少し若い頃に出会えていたら手放しで賞賛できたかもしれません。とはいえ、事件への前振りから連続殺人、そして解決編までの流れは実にお見事。尖がった探偵小説好きであれば存分に楽しめる作品ではないかと思います。

評価:★★☆☆☆

2010年12月16日木曜日

祝もものき事務所(茅田砂胡) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

筆者の作品は異世界ファンタジーしか読んだことないのですが、本書は現代日本が舞台となっています。とはいえ、主人公はある意味とてもファンタジー。探偵さん自身の能力がミステリーという一風変わった作品ですが、軽快に読ませてくれてなかなか楽しめました。



一応探偵事務所を構えてはいるものの、やる気のなさ全開の探偵「百乃喜 太郎(もものき たろう)」。彼には推理力も調査力も腕力も何も備わっていませんが、ある能力(体質?)により一部関係者からは渋い顔をされながらも重宝されています。

ぐうたらな彼ひとりでは何も話が動きません。彼を取り巻く美人秘書と4人の幼馴染達(弁護士、公務員、格闘家、役者)が、百乃喜の能力を駆使して事件の捜査に乗り出します。

その能力自体は一応伏せますが、設定自体は結構ありそうなものかもしれません。本書の主眼はむしろ美人秘書や取り巻き立ちのキャラクタにあるといってよいでしょう。どれもこれも一癖ある人物ばかりで読んでいて楽しいです。

あえて難をあげるとすれば、みんなちょっとできすぎなキャラというところですかね。主人公の取り巻きはもちろん、事件に関わる人物がみなキレイ過ぎな感じ。もちろんそれは長所にもなりうる点で、人によって評価の分かれるところでしょう。

伏線は色々仕込まれているようです。大富豪で、散々恐ろしがられている大家の「銀子」さんも直接は登場せず、主人公や友人達の周辺にも興味深いネタが色々隠されていそうなので、次巻以降が楽しみです。

評価:★★☆☆☆

2010年12月7日火曜日

放課後探偵団(相沢沙呼, 市井豊, 鵜林伸也, 梓崎優, 似鳥鶏) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

好きな作家を追いかけるタイプの私としては、複数作家によるアンソロジーという形式はあまり好きではないのですが、今回は似鳥鶏さんの新作がどうしても読みたくて手にとってみました。大きなはずれのない作品集だったのでほっとしましたが、やはり雑多なのはあまり好みではないかもしれません・・・



タイトルからして学園物ばかりかと思いきや、大学生や果ては三十路のオッサンが主人公の渋い作品まで紛れ込んでいます。似鳥さん以外では、梓崎優さんの作品を読めたのは収穫ですかね。以下、各話の感想です。

■ 似鳥鶏「お届け先には不思議を添えて」
柳瀬先輩も翠も登場しない代わりに妹がちょい役で出てきてヒロイン分を補ってくれます。食事シーンには性格が現われる?ミステリとしてもなかなか良かったです。

■ 鵜林伸也「ボールがない」
何か色々と無理がありそうな話という気はしましたが、公立の高校野球強豪校という舞台は門外漢として興味深い設定でした。長編でじっくり話を作ってもらった方が味が出そうな印象。

■ 相沢沙呼「恋のおまじないのチンク・ア・チンク」
「午前零時のサンドリヨン」のシリーズだそうです。噂には聞いてましたが、この主人公は結構読む人を選びそうですね。私は駄目でした。こういうタイプの少年主人公は、同性視点からだとちょっとしんどい気がします。

■ 市井豊「横槍ワイン」
ちょっぴりご都合主義な結末。でもそれがいいですね。ミステリとしてのリアリティはともかく、骨格がしっかりしてるのが好印象。何作か雑誌で掲載されている「聴き屋」シリーズの作品なのだそうです。近々本になりそうなので、これは買うかもしれません。

■ 梓崎優「スプリング・ハズ・カム」
ミステリとしてフェアなのかどうかは微妙ですが、本書で一番「おっ」とさせられた作品。短編という制約のなかでこれだけしっかり伏線が練りこまれているのはお見事。評判のよい「叫びと祈り」にも俄然関心がわいてきました。

それなりに収穫は多かったものの、やはりアンソロジーへの苦手意識はぬぐえずじまい。個々の作品がどうこうと言うより、流れが断ち切られるような感じがしてしまうのですね。私は本読みとして視野が狭すぎるのかもしれません。

評価:★★☆☆☆

2010年12月2日木曜日

スタイルズ荘の怪事件(アガサ・クリスティー) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

デビュー作のためか、クライマックスの展開は少しこなれない印象を感じなくもありませんが、事件の過程やポアロのキャラクタは流石に魅力的です。それにしても、ヘイスティングズ・・・



今まで全然読んでなかったポアロ物。有名作だけ抑えるつもりでしたが、アクロイド殺しがネタバレくらっていたにもかかわらずかなり面白かったので、初っ端からチャレンジしてみることにしました。

ミステリ部分は正直どうなのかなという印象。意外性はありましたけど、フェアなのかどうか良く分かりませんでした。もっとも、結構読み流してたのでちゃんと読めばそうでもないのかもしれません。

ただ、ポアロの愛すべきキャラについては、本書で既に確立されてるような気がします。まだ他に一冊しか読んでないのでわかりませんけれども。このキャラが楽しめるようになったのは、自分が年取った証拠かなという気もします(^^;

それにつけてもヘイスティングズ。ワトソン役は落とされるのが役目とはいえ、この道化っぷりはあまりに酷すぎます(笑)。彼への評価がこの作品の評価に直結しそうですね。ある意味可愛いキャラで、これがお約束と思えば受け入れられるかもしれませんが、私はいたたまれなさの方をより感じてしまったかも・・・

私的に本書は、ミステリ10%、ポアロ30%、ヘイスティングズ60%の作品。ヘイスティングズのキャラ自体は好きですが、三枚目ぶりがあまりにあまりなのはちょっぴりマイナスです。ただし、続巻に挑む気持ちは一層増してきました。

評価:★★☆☆☆

2010年11月30日火曜日

いっちばん(畠中 恵) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

栄吉の菓子作り修行など個々の話は面白かったですが、今回はいつもにもまして若だんな周辺の動きが少ない感じです。周辺の色事はどんどん動いていく中で、肝心の主人公にはその気配さえなし。よく人気シリーズが成り立っているなと感心してしまいます。



前半が他愛もない話で、後半にかけてちょっと重めのテーマを持ってくるのが本シリーズのパターンですが、今回は若だんな本人の話が直接には絡んでこなかったので、ちょっと控えめな印象があるかもしれません。以下、各話の感想です。

■ いっちばん
妖たちが若だんなへの贈り物で競う一方、またしても日限(ひぎり)の親分に難題がもちかかります。いつもどおりの、なんということもない定番話ですが、こういう話がないと「しゃばけ」シリーズを読んでる気になりません。

■ いっぷく
新興の唐物屋2軒から勝負を挑まれる長崎屋。しかし、そのうち一軒のほうには、若だんなを知る人物がいるようで・・・。過去の登場人物が再登場という形ですが、あまり印象に残ってなかった人なのでちょっと微妙だったかも・・・(^^;

■ 天狗の使い魔
気がつくと夜空を飛んでいる若だんな。脅迫のネタとして天狗にさらわれてしまったのですが、事情をきいて大事にしたくないと思った若だんなが一計を案じます。本書で一番気に入ったお話し。

■ 餡子は甘いか
栄吉の菓子作り修行編。それにしても、彼の才能についてはとことん酷い書かれようです。後継ぎとして、菓子作りは誰かに任せて経営に専念すればよいのにと誰もが思ってしまいそうですが、それでも頑張る姿は健気です。ちょっぴり恋の兆しもあったりなかったり。

■ ひなのちよがみ
分厚い白粉の塗り壁を拭い去り、美人になってしまったお雛さんのお話し。相応な年頃の美人にも関わらず、栄吉の妹以上に若だんなとは何事もおこらなさそうです。オチのあたりは私的にちょっと微妙かもしれません。

こういうシリーズだと分かってはいますが、ほんとうに若だんな周辺は動かないですね。一層そういう目が完全にないとわかれば、潔く見切りも付けられるのですが、筆者の他の作品をみればそうでもなさそうなのがなんとも悩ましいところです。

評価:★★☆☆☆

2010年11月18日木曜日

ゴーストハント1 旧校舎怪談(小野不由美) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

大人気でありながら絶版となっていたシリーズの大幅リライト版。プロローグとしては文句なしですが、新規で読む方には本書だけだと物足りなく感じられるかもしれません・・・ぜひ2巻以降も読んでから判断いただきたいです。



非常に入手の難しかった本シリーズ。私は人にはちょっと言いにくい方法で読んでしまっていたのですが、今回あらためてお布施の機会を得られたのは嬉しい限りです。

旧版が既に手元にないので直接の比較はできませんが、文体は多少硬くなってるようですね。ただ、ストーリーの大枠は基本的に変わりないですし、語りは相変わらず麻衣の一人称。旧版やコミックのファンにも安心して読んでいただけるかと思います。

麻衣の口調が結構ぶっちゃけてるんで、初読のかたにはこれで本当に硬くなってるの?と思われてしまいそうですが、なにせ最初はレーベル的制約がかなりきつかったそうで、当時の少女小説らしさがコテコテに全開の文章だったのです。

ただ、そのようなキャピキャピした文体と、そのわりに意外としっかりした内容とのギャップこそが、本書の魅力の一端でもあったとは思います。その点、少なくとも一巻だけ読む分には単なるパワーダウンと捕らえられてしまうかもしれません。

今回は事件自体も少々肩透かしなものですし、4人の霊能者達もほぼ空気の完全脇キャラです。ちょっと胡散臭いだけの彼らですが、次からは大活躍するので本当に本書だけで見切りをつけないでください。特に当分空気状態の綾子が活躍するまでは待っていてほしいです(^^;

次巻では麻衣がナルの事務所でバイトを始めますが、たしかそこで彼女の裏事情が明らかになったはずです。事件も本格的にホラーらしくなってきますので、しつこいですが評価は必ず次を読んでからにしていただきたいです。

評価:★★☆☆☆

2010年11月15日月曜日

東京科学散歩(竹内 薫, 中川達也) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

東京都内の散歩スポットが紹介されていますが、それらにまつわるちょっとした疑問に対して、科学的説明が加えられているのが本書の特徴です。もっとも、「科学」の部分はあまり期待しすぎないほうが良いかもしれません。気の抜けた楽に読める一冊です。



新しい散歩スポットを探すというより、知ってる場所を別の視点から読むという気でいたほうが楽しめると思います。目次は以下の通りです。

1 東京スカイツリーは大地震でも倒れない? 押上・東京スカイツリー
2 富士塚で富士登山と同じ効果がある? 千駄ヶ谷・鳩森八幡神社
3 桜の花の色はだんだん白くなっている? 上野恩賜公園
4 「パワースポット」のパワーはどこから発生している? 原宿・明治神宮
5 江戸前は本当に美味しいのか? 築地市場
6 黒い砂浜と白い砂浜の謎 お台場海浜公園
7 湧水の水はなぜ美味しい? 国分寺・殿ヶ谷戸庭園
8 不動様はなぜ五色? 目黒不動
9 クラゲはなぜ夏の終わりにやってくるのか? 葛西臨海公園
10 雨男・雨女の根拠は? 日野・高幡不動
11 花粉症は都会の病? 江東区・夢の島
12 地平線の月はなぜ大きい? 六本木ヒルズ
13 田園調布は古代から高級住宅地だった? 多摩川台古墳群
14 東京に地下世界がある? 幻の新橋駅
15 三毛猫はなぜメスだけなのか? 谷中・根津・千駄木
16 最新!お台場科学館めぐり 日本科学未来館、ソニーエクスプローラサイエンス、リスーピア

私は最近、国分寺に行くことが多いので、殿ヶ谷戸公園が気になって本書を手に取りました。スカイツリーやお台場などの有名な観光スポットより、千駄ヶ谷や根津などちょっとマイナーな場所のほうがむしろ楽しく読めた気がします。

科学のお話しもそれなりにためになりましたが、タイトルからお分かりのようにトンでも系のトピックも多いです。ただ、解説の竹内氏自身が無茶振りだと顔をしかめるお茶目さなので、肩を抜いて読む分には良いのではと思います。

スカイツリーは自宅から少し歩けば見れるくらいのところに住んでいますが、それも友達に言われるまで気がつかない体たらく。そういえば墨田公園もわりと近所なのに全く行ったことがありません。本書をきっかけに、少々足を運んでみようかという気になりました。

ガイドブックとして読むには若干薄いと思います。あまり多くを求めず、目次をみて気になるところがあれば目を通してみるという読み方が良いのではないかと思います。

評価:★★☆☆☆