専務をぶん殴って一流商社をやめた女主人公「吉原陶子(よしはらとうこ)」の男らしさが実に良いです。脇キャラたちも味があって作品の雰囲気は文句なしなのですが、陶子の「特殊能力」をどうとらえるかで、作品への評価は分かれそうです。
超能力っぽいものがでてくる点に少し躊躇していたのですが、設定としては超能力というよりファンタジーっぽいです。4話構成のなかで徐々に能力の全貌が見えてくるあたり、なかなかいい感じの話し作りだったと思います。
ただ、登場人物も設定もとても魅力的なだけに、特殊能力に頼る必要があったのかなという気が個人的にはします。うまくすれば有川浩さんみたいな話になりそうなんですけどね。
リアルな部分の話も特殊能力がらみのエピソードもそれぞれに質が高いのが、逆に作品の雰囲気をちぐはぐにしている印象です。パーツは優れているのに、組み立ててみたらバランスが悪かったという。
個人的に本書で一番好きなのは、初っ端の入社試験の話です。「さおりん」の素性に関するエピソードも、ミステリチックでよかったですね。どちらも全く特殊能力が絡みません。変な能力がなくても、素で十分面白いんです。
大人なキャラ萌えやいい話系が好きな方にはお勧めです。デビュー作と比べて作品の雰囲気もずっと私好みになっていたので、今後に期待したいです。次は超能力無しの作品が読みたいですね・・・
評価:★★☆☆☆
2011年3月13日日曜日
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