「花竜の宮」作者による非SF作品。和菓子屋のお嬢さんと天才ショコラティエを主人公とした、クールなスイーツミステリ短編集です。「ラ・パティスリー」の姉妹編ですが、本書だけでも十分楽しめます。
甘いものは好きなのですが、本格スイーツとなると男性の私にはちょっと遠い世界になります。本書のようなテーマの作品はなかなか新鮮でとても楽しいです。
京都に本店を持つ老舗和菓子や<福桜堂(ふくおうどう)>の売り子をしている「絢部(あやべ)あかり」と、その近隣に店を構える人気ショコラトリー<ショコラ・ド・ルイ>のシェフ「長峰和輝(ながみねかずき)」。
設定だけ聞くとロミジュリっぽい感じですが、お互い洋菓子も和菓子も好きということでとても友好的です。様々に起こる事件を通して徐々に親睦を深めていきます。
互いに敬意を持ちながらも、冷静なようで何かと好奇心を発揮しがちなあかりに対して、長嶺が毅然とした対応をすることもしばしば。緊張感のある関係といえるでしょう。
べたべたの恋話にならないのがいかにも筆者らしいところですね。最終話に登場する「天野花梨(あまのかりん)」はてっきり恋敵役かと思っていましたがそんなこともなく。結局二人の関係は本書では曖昧なままです。
前作「ラ・パティスリー」と比べて全編を通した趣向のようなものはないのですが、私は本書の淡々とした構成のほうが好きですね。各話とも地味ながら良質な仕上がり。流石としか言いようがありません。
それにしても、あかりに彼氏がいないことや長嶺が独身であることはお互い確認しあっているのに、結局最後まで本当に何事もなく終わってしまいました。続きあるんですよね(^^;
評価:★★★☆☆
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ラ・パティスリー(上田早夕里)
2011年3月26日土曜日
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