サスペンスホラーという分類になるのでしょうか。ミステリ分が少なめなのは個人的に物足りなかったですが、中盤のハラハラ展開にはぐっと引き込まれました。全編通したきれいな雰囲気をどうとらえるかで、評価の分かれる作品かと思います。
死体に触ると死ぬ直前の記憶が見える少女「古賀葉月(こがはづき)」が、ある男に誘拐されて強引に死者の記憶を見せられます。犯人の意図、彼女の見た記憶の意味、さらには父の失踪への関与。様々な疑問が生まれるなか、今度は彼女が接触を持った人物が次々と殺されていきます。
筆者の作品はあまり読んでいないのですが、「ぶたぶた」の印象からほんわか系なもの専門の方かと思っていました。本作はシリアス一辺倒。ただし文章は読みやすいですし、ホラーっぽい展開ながらも怖いというよりきれいな世界観が印象的です。
私はあまり怖いのが得意ではないので、その意味では本作の雰囲気はありがたいくらいでしたが、ホラー好きの方には物足りなさも感じられるかもしれません。むしろ私としてはミステリー分の薄さのほうがちょっと残念な感じでした。謎を引っ張っている割には解決篇で滑っているような・・・
途中の展開は素晴らしかったと思います。見えない敵の影におびえる恐怖、身近な人間に迫る危機。ページ数が少ないとはいえ、この手の作品を一気に読みきれたのは私にとってはめずらしいことです。過程が良かった分、逆に着地点への評価が厳しくなってしまったところはあるかもしれません。
全体的な印象としては、どのあたりをターゲットにしてるか若干の疑問を感じました。恋愛フラグっぽいものもあるとはいえ、とても青春ものと呼べるような話ではありませんし、シリアス基調なので萌え成分も皆無ですし、かといってホラーとしてもそれほど怖いわけではありません。
作品の質とは別のところで、「誰得?」というのが本書の正直な感想です。ホラー方面に詳しくないので、最近の流行はそういうものなのかもしれませんけれど。文章を読ませる筆者の力量自体は見事だと思いましたが、何が売りなのかわかりにくい分、人にはお勧めしにくい作品かもしれません。
評価:★☆☆☆☆
2011年3月4日金曜日
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿