私立鯉ケ窪学園を舞台としたミステリ短編集です。バカ売れしまくっているらしい前作よりもミステリ分は高いのですが、雑誌掲載分を集めたもののせいか、短編集としての統一感はいまいちのような気もします。本質はキャラ萌え小説といっていいくらいかもしれません。
「エアコン」のあだ名を持つ、ちょっと空回り気味の探偵部副部長「霧ヶ峰涼(きりがみねりょう)」。この主人公に感情移入できるかどうかで、本作の評価は決まってきそうです。私も一話目はちょっとうざいキャラかなと感じていたのですが、二話目以降はすっかりはまってしまいました。
一話目だけちょっと古い作品のようなので(2003年6月初出)、その分少し風景がかわって見えるのかもしれません。ただ、ミステリとしてのできはむしろ一話目が一番良いくらいなので、書店でちら読みするのであれば冒頭だけで放り出さないようお勧めいたします。
全8作品。ミステリ分は基本的に高いですが、質的には割とばらつきがあるかもしれません。連作短編形式ではないので、多少設定に気になるところがあっても、あまり深読みはしないほうが良いかと思います。一話目、二話目、四話目あたりが私的には好みの作品でした。
個人的に一番不満なのは、探偵役が一番ハマる顧問の石崎先生が、全8話中3話にしか出てこないことです。探偵としてはギリギリ名探偵という程度の霧ヶ峰。石崎先生を相手にボケ役に徹したときこそが魅力全開の瞬間です。逆に、言っては悪いですが探偵役をやらせるといまいち締まらない印象も・・・
ミステリとしては平均するとまあ上質と言った程度の本書ですが、一番の魅力を端的に表現するなら○○○○○○です。これを明かすとある作品のネタバレに絡んでくるのが、レビュアー泣かせなところです。同学園を舞台にした関連小説もあるようなので、そちらにもチャレンジしてみたいと思います。
評価:★★★★☆
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2011年3月7日月曜日
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