お嬢様警官と毒舌執事によるミステリ短編集。狙いすぎるくらい狙った設定ですが、一話ずつがしっかり作りこまれているため、それほどいやみになりません。もう少し派手さがあってもよかったのではと思ってしまうくらい。ソフトカバーよりは文庫で読みたい一冊。
宝生グループ令嬢「宝生麗子」が自宅でくつろぎながらぽろっと漏らした推理に対し、慇懃無礼なことこの上ない執事の「景山」が「あほ」だの「節穴」だの「素人以下」だのと痛烈な毒舌を放ち、一瞬の間合いの後お嬢様が大激怒するお話です(一応その後推理もあります)。こういうパターン化された掛け合いは楽しくてよいですね。
刑事の奥さんが家に事件を持ち帰る、太田忠司さんの「ミステリなふたり」とちょっと似た感じの設定かもしれません。はっきりいって大好物です。クリスティのトミーとタペンスシリーズといい、こういうホノボノしたつがいものが好きなのは、リアルで持たないものを無意識に求めているからなのでしょうか・・・
執事探偵はよいのですが、大金持ちな設定のほうももっと生かしてほしかったかなという気はします。筒井康隆の「富豪刑事」みたいにお金をばら撒きまくるのは本書の雰囲気に合わないでしょうが、もう少し事件の解決とお金持ちの設定を絡めてほしかったと思います。友人の結婚式でたまたま事件に出くわす第4話のような要素がもう少しほしかったです。上司の風祭との対比もいまいちだったかも。
それと、ラストの一話くらいは全体を総括するような話しにしてほしかったかなと。本書は全話が完全に独立の短編なので、多少は連作短編の味がほしかったです。もちろん完全に好みの問題なのですが、ソフトカバーで1,500円だして普通の短編集だったのがちょっと物足りなく感じたのです。文庫なら全然文句なかったんですが。
本書では執事「景山」の素性が全く明かされていないので、まだまだ続巻が期待できそうですね。設定自体は大好物の部類なので次にも期待したいですが、できれば文庫で出してほしいかなぁ・・・もっとも、中村佑介氏のカバー絵、求心力がものすごいですね。ソフトカバーでもまた手が出ちゃうかもしれません。
評価:★★☆☆☆
2010年9月6日月曜日
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