1940年、第2次大戦真っ只中のお話し。ドイツのスパイが潜んでいると思われる地に、本職のものたちでは面が割れている可能性もあるということで、あえて素人のトミーが送り込まれることになります。のけ者にされそうだったタペンスですが、そこは彼女のこと、実にうまく話に割り込んでみせます。
本書が実際に出版されたのも1941年ということで、戦時の不安な情勢が臨場感溢れる形で描写されています。歴史に疎いので、第2次大戦については日本関係のことしか印象にありませんでしたが、ヨーロッパの情勢についても少し勉強してみたくなりました。
前巻ラストで妊娠が発覚したタペンスですが、その子供(男女の双子)もいい年齢の若者になっています。話しにはちょっとしか絡んできませんが、そのちょっとだけ絡んだ部分が実に面白い状況を生み出してくれます。
ミステリやサスペンスのそれぞれの要素が素晴らしいのですけれど、それをひとつの話しに纏め上げた完成度が半端じゃありません。なんというか、こなれてる感が凄すぎて、400ページが本当にあっという間と感じてしまいました。素晴らしい翻訳のおかげもあるかもしれません。
二人の年齢は8歳差かと思ってましたが、実は同い年なんですかね。どこで読み違えてしまったのでしょうか。前巻レビューにおけるトミーのロリコン疑惑は全くの濡れ衣だったようです。失礼いたしました。
とにかくどれだけ歳を重ねようと全然変わらない二人の関係が、この作品の雰囲気を実に良いものとしてくれます。娘のデリクの
ちょっと見てよ、あのふたりを――どうでしょう、手なんか握っちゃって!でも、じつをいうと、ちょっとかわいいわね。(P414)この言葉に、本書の最大の魅力が集約されているのではないかと思うのです。
評価:★★★★★
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