父親にして先帝のヴェスパシアヌスがしっかり土台を築いてくれたおかげで、低い出自にもかかわらず歓迎を持って迎えられたティトゥスの治世。ポンペイを襲う有名なヴェスヴィオ火山の大噴火や、ローマ市中の火災、疫病対策に追われた挙句、あっという間に終了してしまったのでした。
後を継いだドミティアヌスは意欲満々。いくつかの失策は犯したものの、その施策は総じて評価すべきものであったと、後世の評価では一致しているようです。彼が悪評を残してしまったのは、理想主義が過ぎたためだったようですね。そういう場合、敵方になるのは元老院と相場が決まっています。
暗殺の直接の原因は、養子にした息子達の実父母が宗教に嵌ってしまったためとのこと。宗教自体には寛容でも、政体を揺るがす主張には断固として臨むローマのこと。ましてや皇帝候補の実父母となると、生真面目なドミティアヌスとしては断罪せざるを得なかったわけですが、親族への果断な処置が他の身内に不安を呼び起こしてしまったのでした。
しかし、もしかしたら裏には元老院の暗躍があったのかもしれません。それが証拠に、ドミティアヌス暗殺後の動きが実に早い。当時の執政官で、皇帝とも元老院派とも一線を画すネルヴァがあっさり新皇帝として擁立。ヴェスパシアヌス、ティトゥス、ドミティアヌスと三代続いたフラヴィウス王朝は、その治世に正当な評価を受けないまま、終わりを告げてしまいます。
五賢帝最初の一人とみなされる新皇帝ネルヴァは御歳70歳。中継ぎであることは衆目の一致するところで、実際に寿命で倒れるまでの在位はわずか1年3ヶ月だけです。そんな彼が五賢帝の一人と数えられるのも不思議なことですが
ネルヴァが五賢帝の一人に加えられた理由は、トライアヌスを後継者に選んだ一事のみ(P192)とあるように、属州出身のトライアヌスを養子に据えた慧眼には相当なインパクトがあったようです。ここから、ローマの最盛期が始まります。
評価:★★☆☆☆
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