2010年9月21日火曜日

今朝の春―みをつくし料理帖(高田 郁) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

お店に火をかけられるやら料理のアイデアを盗まれるやら、もとの生い立ちとあわせて「艱難辛苦」の四字熟語が実によく似合うシリーズでしたが、不幸にめげず頑張る澪(みお)の前向きさのおかげか、だんだん悩みのレベルがマシになってきたような気がします。江戸時代の料理屋を舞台にした連作時代小説第4弾です。



幼馴染で吉原の頂点に位置する「旭日太夫(あさひだゆう)」、澪がほのかな恋心を抱く訳知りな貧乏浪人風の「小松原」、江戸一番との評判ながらちょっとあくどい名店「登龍楼」とのごたごたなど、このシリーズにはいくつかの軸がありますが、それぞれが少しずつ進展をみせていっている感じです。以下、各話の感想。

■花嫁御寮 - ははきぎ飯
大奥に奉公の話が出た大店の娘「美緒(みお)」に包丁を教えることになった澪。美人を鼻にかけた風だったこの娘ともすっかり友人っぽくなってしまいました。ところが、同じ読み方をする二人の名が、思わぬ行き違いを呼ぶことに。今までほのめかされる程度だった小松原の素性がちょっと詳しく明かされます。

■友待つ雪 - 里の白雪
戯曲書きの大先生にしていつも口の悪いツンデレ「清衛門(せいえもん)」先生が、「あさひ太夫」を題材に作品を書くと言い出します。あさひ太夫こと「野江(のえ)」が遊郭に入ることとなったいきさつが明かされるとともに、澪には壮大な目標が突きつけられることになります。

■寒紅 - ひょっとこ温寿司(ぬくずし)
店を手伝ってくれている「おりょう」の亭主で腕のいい大工「伊佐三(いさぞう)」に浮気疑惑が発覚します。おりょうは仕事が手につかず、わが子として可愛がる「太一」も不安げな様子に。さらにその女が直接おりょうや太一に接触してくるという・・・うーん、この話はあまり面白くなかったかも。特にオチがちょっと。

■今朝の春 - 寒鰆(かんざわら)の昆布締め
年末恒例の料理番付が今年は出ないという。澪の「つる家」と「登龍楼」で票が真っ二つに割れたためとのことで、版元から料理対決の提案がきます。気が乗らないながら引き受けた澪ですが、題材は上方出身の彼女にはいかにも不利な「寒鰆」。「究極」vs「至高」を思わせるどストレートな料理対決。どちらが「至高」かは読んでみてのお楽しみです。

それにしても、筆者はテーマとなっている料理は実際に自ら作ってみているとのこと。特に寒鰆なんかは大変だと思うんですが、凄いというか食べてみたいというか。この作品がもう少しメジャーになってくれれば、筆者監修の料理屋とか出来てくれたりしないですかね。そのときは敷居の高い「登龍楼」でなく、庶民の味方「つる家」スタイルで是非お願いしたいです。

評価:★★★☆☆

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