2010年9月9日木曜日

ストロベリーナイト(誉田哲也) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

誉田作品を武士道シックスティーンから入った私としては、冒頭ちょっと引いてしまいそうなほどの残虐シーンにびっくり。読み進めてさらに驚くのは、これだけベクトルが異なるにも関わらず、両作品の雰囲気がそっくりなことです。三十路直前のやんちゃな美人刑事「姫川玲子(ひめかわれいこ)」が活躍する、シリーズ第一弾です。



玲子のキャラクターが本書の一番の売りになるのでしょう。姉御肌でアクティブで頭も良いのですが、人間として完全とは程遠い性格をしています。愚痴るし弱音吐くし陰口叩くし美人をちょっと鼻にかけてるし。さらには警察官らしくない直感型の捜査。そういういかにも人間臭い彼女が、とても格好よく魅力的です。

敵の前にまずは味方との戦いが大変です。この世で二番目に嫌いな男「日下守(くさかまもる)」は、今回急性盲腸炎ということであまり出てきませんが、公安上がりのガンテツこと「勝俣健作(かつまたけんさく)」があの手この手と嫌がらせを仕掛けてきます。武士道セブンティーンの吉野先生といい、陰険なおっさん書かせるとホントうまいですね。

事件の内容はかなりショッキングでインパクトがあります。ただ、個人的には少し複雑すぎるというか、終盤ごちゃごちゃした感じもあります。まぁ、私の頭が悪くて理解が追いつかなかっただけなのですが。ミステリとしての仕込み自体は見事なのですが、クライマックスあたりはどちらかというとサスペンス風味だったため、印象がぼやけてしまった感があります。

大きな事件と個性的なキャラクターたちが目を引きますが、実は丹念な取材に基づく細かい部分の精緻な描写こそが、本作品を支えているのではないかと思います。リアルな描写があるからこそ、派手な物語が陳腐なものとならずにすんでいるのでしょう。この点は武士道シリーズでも感じたことです。

従来の警察小説のイメージからはちょっと外れた、不思議な印象の作品です。玲子と彼女の部下「菊田」との関係はどうなるんでしょうか。申し訳なくもちょっと役者不足な感がなくもないのですが、玲子の性格を考えればお似合いなのかもしれません。恋話の展開も楽しみにしておきます。

評価:★★★☆☆

0 件のコメント:

コメントを投稿