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2011年9月14日水曜日

夜の光(坂木 司) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

高校生の少年少女4名を主役とした青春ミステリです。読み始めはちょっときついなと思いましたが、彼らの素性が明らかになるにつれ、徐々に感情移入させられていきます。世間や周囲と慎重に距離を取る彼らの青臭くさが、なんとも好ましい一冊です。





裏書にある「スパイ」とか「ミッション」とかいう言葉はあまり気にしないほうが良いと思います。自分の本音を隠すための擬態をそのように称しているのですね。

筆者らしい設定とは思いつつも、最初は何とも気取っているように感じられて、ちょっぴり抵抗を感じました。しかし、これが読み進めていくうちに徐々に心地良いものに変わっていくのだから不思議です。

なんといっても、4人の少年少女たちのキャラクターが素敵です。人当たりが良かったりチャラかったりする彼らの裏に隠れた事情が、一人につき一話ずつ順に明かされていきます。

その事情というか真相というかは、小説的に見れば必ずしもインパクトのあるものではありませんが、むしろその普通さが彼らの仲間内で見せる素っ気なさと相まって、作品全体を非常に良い雰囲気に仕立てあげています。

一応ミステリ要素もしっかり入っていますが、ストーリーを引き立てるための材料程度の扱いなので、そちら方面はあまり期待しすぎないほうが良いかもしれません。

終わり方もちょっとしんみりしつつ未来を見据えた感じで、とても良かったと思います。あまり派手でない、素っ気ない空気の作品が好きな方にはお勧めです。ミステリというよりは青春小説の佳作だと思います。

評価:★★★☆☆


2010年10月11日月曜日

ホテルジューシー(坂木司) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

大家族の長女で万事しっかりしていないと気のすまない女子大生「柿生浩美(かきおひろみ)」。そんな彼女がホテルのバイトを通じて、沖縄のゆるさに徐々になじんでいくお話。読み始めるまで気づきませんでしたが「シンデレラ・ティース」の姉妹編です。



シンデレラ・ティースのサキがよく携帯で話していたのが本書の主人公ヒロちゃん。おっとりしていかにもお嬢様風のサキとは対照的に、ヒロは大柄で男勝りなところもあるしっかりものの女の子です。小説の主人公としては、こちらのほうが断然好きですね。

インドなんかもそうですが、異文化感あふれる環境というのは人を引き付けてやまない魅力があるようです。沖縄の場合、歴史的な経緯に加えて米軍基地の影響もあるためか、九州と比べても文化的に大きな違いがあるように思えますね。

浩美が勤めることになったのは那覇市の小さなホテル。看板も見づらく客の殆どが常連客ということもあって、お勤め自体はさほど大変なものでもなさそうですが、そのゆるい雰囲気に慣れるのに貧乏性ぎみな浩美は苦労することになります。

そのゆるさの代表格が、中年のオーナー代理「安城幸二(あんじょうこうじ)」。あまり経営に携わらないオーナーに代わる実質的な責任者の彼は、まさに昼行灯という言葉がぴったり来る人物です。浩美は彼に散々悩まされることになります。

そんなロマンスのかけらも感じさせない彼が、本作品の探偵役。いつもはだらしないだけの安城も、有事には大変頼りになります。客のわけありそうな様子は事前に察知し鮮やかに対応。時には勇み足気味の浩美を厳しくたしなめることもあります。

このギャップ、時折垣間見えるこういう格好良さが、昨日読んだ本の主人公にもほしかったなと思わずにいられません。ミステリとしてのクオリティも流石は筆者ならではの安定感で、いろいろな意味で安心してお勧めできる作品です。

評価:★★★☆☆

関連レビュー:
「シンデレラ・ティース」(坂木 司)

2010年5月11日火曜日

「シンデレラ・ティース」(坂木 司) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

母親に騙されてよりによって歯科医でバイトすることになってしまった歯医者嫌いの叶咲子。彼女が徐々になじんでいくという、ありがちといえばありがちな設定ですが、題材が歯科医というのが共感を引き起こさせてくれます。誰でも歯医者には何がしかの思い入れがありますよね。坂木氏お得意の業界もの、読後感さわやかな連作短編ミステリです。



まず思ったこと、咲子馴染むの早すぎ(笑)。まぁ、いいこちゃんヒロインですからね。逆に嫌な雰囲気をむやみに引っ張るのもあざとい感じがするかもしれません。

探偵役を歯科医でなく歯科技工士に設定しているのが面白いところです。お客側からは見えにくいけれど、歯科医を構成する上では重要な職種にスポットライトを当てようということでしょうか。四谷さんかっこよすぎます。

歯医者のお客の独特な事情をミステリに仕上げる手法は相変わらずお見事です。具体的なところはネタバレになりそうなので書きませんが、いかにもありそうだなと感心してしまいました。

咲子のカマトトっぷりは若干鼻につかないでもなかったですかね。
のんびり育てられたせいか、私は昔から怒るタイミングを逸することが多い。(P161)
とか、一人称で自分のことをこういう風に言われると、ふーんって感じもしなくもありません。

総じて読後感が良く、ミステリ的なオチもしっかりした好作品です。歯医者嫌いな人はためしに読んでみると、苦手意識を払拭できるかもしれませんよ。でも、その前に歯医者を題材にした本なんて手に取る気も起こりませんかね。


評価:★★☆☆☆

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