2010年9月27日月曜日

幼き子らよ、我がもとへ〈上〉(ピーター・トレメイン) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

7世紀アイルランドを舞台に「法廷弁護士(ドーリィー)」フィデルマが活躍するケルトミステリーの邦訳第2弾。次期王位継承予定者にしてフィデルマの兄「コルグー」からの依頼ということで、今回は邦訳一本目と違いロイヤルな設定が存分に生かされることになります。というか、個人的には翻訳の順番が間違っている気が・・・



7世紀アイルランドは5つの王国に分かれています。コルグーはその一つにして最も大きな「モアン王国」の次期国王です。というか、ぶっちゃけ今回の話の途中で国王になります。ここはネタバレとかでなく、普通に病死です。

邦訳第1弾が本来の刊行5冊目、第2弾が3冊目という不可解な順番での日本版刊行となっています。もしかしたら「王妹」という単語を宣伝文に使うためだったのかもしれませんね。

ストーリー自体は前の話が分からなくてもちゃんと読めるようにはなっているのですが、1冊目や2冊目の事件についてもチラッと触れられているところがあるため、若干のストレスは感じなくもありません。

今回は、隣国「ラーハン」の高名な学者がモアンの地で殺害されたため、その代償に国境の「オスリガ」という地域を明け渡せという難癖をつけられてしまいます。ちょうど今、わが日本の隣国がつきつけてきているいちゃもんと同じような理不尽さですね。

フィデルマが事件の真相解明に乗り出すのですが、事件から時間もたっているため相当苦労するなかで上巻は終了してしまいます。国際問題とも絡み、実に読み応えのある話となっています。

邦訳1冊目の「蜘蛛の巣」も相当凝った話ではあったのですが、地方ローカルで舞台が閉じてしまっていたため、スケールの点でいささか物足りなくもありました。やはりあれが1冊目というのはインパクト的にどうだったのかなという気もします。

今回はとにかく話が大きくて緊張感をはらむ展開です。いまだ事件の全容がかけらも見えてきていないので、どう展開していくのか大変楽しみです。

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