トミーとタペンスシリーズ第2弾。短編集ですが、まとめて一本の長編といって良い構成です。この作品、中学生のとき大好きだったんですけれど、20年後の今読み返しても実に良いですね。良質なミステリというよりは掛け合いコメディとか夫婦漫才とかいったほうがしっくりきます。でも、そこはクリスティのこと。時々きらっと閃く謎解きが抜群のアクセントとなっています。
秘密情報局に勤めるトミー(ただし純然たるオフィスワーク)のもとに、上司であるカーターから、半年ほどある探偵事務所の所長を引き継いでみないかとの依頼がきます。
その探偵事務所にはスパイ疑惑が持ち上がっていて、元の所長はすでに拘束されるも口を割らず。そのため、彼の名をそのまま騙って探偵業を続け、不審な人物からのコンタクトがあれば報告してほしいとのことです。そして、二人の探偵ごっこが始まります。
何しろ探偵業については素人な彼らのこと。各話ごとにホームズやらソーンダイクやら隅の老人やら、挙句の果てには著者自身の名探偵であるポアロやらを気取って事件に取り組みはじめます。
その名探偵の模倣ぶりは滑稽でとんちんかんとしか言いようがないのですが、事件自体はなぜか見事に解決。彼らの読書歴が何の役にも立っていないところが実に素敵です。ちなみに、元ネタの探偵たちを知らなくても十分楽しめるのでご安心ください。
名探偵を模した導入→行き詰まる→はっとするきっかけ→真相解明。基本的にこの黄金パターンが繰り返されるわけですが、そこでたまに入るアクセントが実に小気味よく効いています。もちろん合間にはくだんのスパイがらみの事件も起き、最終話では大団円の結末を迎えることとなります。しかし、最後のオチはそうつけるのかー・・・実に二人らしくて脱帽です(^^;
とにかく二人の掛け合いが楽しすぎるのです。純粋なミステリとして評価するならばそれほど高い点数とはならないのですが、この二人がこの二人らしさを遺憾なく発揮しているところが本書の最大の魅力なのです。
しかし、前作ではあわせて45にみたないとされていた二人の年齢が、6年後の本作では32歳と24歳と明かされています。うーん、8歳差?二人は幼馴染で、しかもトミーは子供の頃からタペンスのことが好きだったと告白していたはず。タペンス10歳のころトミーは18歳。なんというかとんだロリコン野郎というか、光源氏というか・・・そういうところも素敵だと思いません?w
評価:★★★★★
関連レビュー:
秘密機関(アガサ・クリスティー)
おしどり探偵(アガサ・クリスティー)(本書)
NかMか(アガサ・クリスティー)
親指のうずき(アガサ・クリスティー)
運命の裏木戸(アガサ・クリスティー)
2010年9月4日土曜日
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿