トミーとタペンスシリーズ第4弾。前作から20年以上たって書かれた作品です。二人は60歳くらいになるでしょうか。老人ゴシップっぽい趣きの作品になるかと思いきや、クールな展開に素直に楽しめました。
母の蔵書を読み漁っていた小・中学生時代ですが、クリスティーの作品でミス・マープルのシリーズは1冊も読んだことがありません。主人公が老人というのが食指が動かなかった理由かもしれません。じゃあポアロはどうなんだというと、そちらも一部の有名作品しか手にとってはいないのです。
トミーとタペンスも今回は老齢の域に達しているということで、少し躊躇するところが無くもなかったのですが、読み始めてすぐにその杞憂は吹っ飛びました。老人臭くないわけではないんです。話題はいきなり養護ホームからですし、面会に行った気難しいエイダ叔母さんはその後まもなく亡くなってしまいますし。
結局、若ければ若いなりに、歳を取ればそれなりに、タペンスがタペンスらしい好奇心を存分に発揮しているところが良かったのだと思います。今回は親戚に引き取られるかたちで行方の分からなくなったランカスター婦人の足跡を、たった一枚の絵だけを手がかりに探していくことになります。
実は少々展開が退屈というところもありました。一場面ずつをこまめに描写した結果、自然とページ数が増えていっている感じです。ただ、飽きる一歩手前で絶妙に場面転換されるのはさすがです。タペンス→トミーと視点が移り、同じ事件に対して二人が別のアプローチから接していくことになります。
全体的なストーリーも最後のオチも悪くは無かったのですが、旧友アイヴァー・スミスが偶然関わったり、アルバートの特技がたまたま役に立ったりと、多少ご都合主義な点が目立った気もします。まあ、タペンスとトミーの魅力がしっかり描かれてさえいれば、それらの欠点も些細なことです。
評価:★★★☆☆
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2010年9月30日木曜日
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