2010年9月5日日曜日

サクラダリセット3 MEMORY in CHILDLEN(河野 裕) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

素晴らしいですね。キャラクターの造詣、叙情感あふれる描写、様々な能力を駆使したSFトリック。すべてにおいて私好みの作品です。2巻は能力の使い方が少々難しくて追いつかないところがありましたが、その点でも本巻はGood。不思議な能力者の集う咲良田シリーズ第3弾です。



3巻にして表紙が春埼から変わったのかと思いきや、中学生時代の彼女でした。本書は現在視点からの過去話となりますが、未来視の少女「相馬菫(そうますみれ)」により、現在と過去が見事なリンクを見せています。

なにをおいても注目は、中学生時代の「春埼美空(はるきみそら)」。高校時代となっても喜怒哀楽に乏しい彼女ですが、中学生のころはそれが一層とんがっている感じです。そういう春埼美空が形成されてしまったルーツが本書で明かされます。

相馬菫と「浅井ケイ」の関係も見逃せないところです。菫がケイに持つ感情、その理由が明かされるくだりでは本当にうならされました。未来視という能力はSFでは割とありふれた設定だと思いますが、それをこんな風に使ったのは初めてみました。

前巻から引っ張っていた、複数の能力を組み合わせることにより相馬菫を生き返らせる方法。これはちょっと難しいというか、ピンと来ない感じがしました。まぁ、それまでの展開で結構おなかいっぱいだったので、あれくらいでちょうど良かったかもしれません。

結構シリアスな読感なので、ライトノベルレーベルでなくても通用しそうな本作品ですが、それでは椎名優さんのイラストがつかないですからね。本書では特にラスト付近で髪を切った春埼のはにかむような笑顔が最高です。その後の展開を考えるととても切なくなる幻の笑顔・・・。

複数の女性キャラクタが登場する作品なのに、本シリーズの表紙は春埼で統一されています。この判断は見事というしかありません。様々なパーツが優れているにもかかわらず、本シリーズを一言で表すなら「春埼萌え」に集約されるのでしょう。そこがぶれないのが一番素晴らしいところです。

評価:★★★★★

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