2010年9月13日月曜日

ソウルケイジ(誉田哲也) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

前作はシリーズの立ち上がりに相応しい派手な話しでしたが、今回の事件のほうが警察小説らしくて私は好きです。でも、舞台装置が地味でも仕掛けはそうとう凄いですよ。姫川玲子シリーズ第2弾です。



忘れかけていた伏線がああいう形で回収されるとは思いませんでした。びっくりしたというのもありますが、それよりは切なさというかやりきれなさがぐっと来る感じです。熟練のミステリ読みなら結構途中で真相見抜けちゃうのかもしれませんが、そういう意味では私は幸福な読者でした。

今回、玲子が目の敵にする同僚の日下は、前回対立したガンテツとは違ってえらく真っ当な人間です。証拠重視で理詰めに積み上げていくスタイルは確かに玲子の直感重視と正反対ですが、日下への敵対心はどう考えても筋が通っているようには見えません。

そもそも、日下のほうからは玲子を全然敵視していません。日下の好感度と比例して玲子のわがままが際立ちます。でも、彼女のそういう理不尽さこそが本シリーズ一番のみどころだから仕方ありませんね。どれだけ無茶を言っても陰湿にならないのが彼女の良いところです。

今回の事件も相当黒い展開をみせますが、誉田氏の作品にはそういう重さを感じさせない爽快感があります。事件の舞台も酷いし関係者の背景も重いのに、何故こうも軽快に読ませることが出来るのか不思議です。本書は本当にどこをとっても私好みの作品でした。

ところで、年上の部下である菊田君は、玲子のパートナーとして徐々に距離を縮めつつありますね。ちょっとキャラ的に玲子の相方として物足りない気もしていましたが、彼なら主役を食うことありえないからそれはそれでいいのかなと思うようになってきました。ほんと申し訳ない言い草ですけど(笑)

評価:★★★★★

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