「七回死んだ男」と「11人いる!」を足して割ったような感じのお話しです。ミステリとしては甘いかなというところもありますが、メインの仕掛けはお見事でした。無理せず良いバランスでまとめあげた佳作だと思います。
高額のバイト代につられて、一ヶ月間ボロ家に閉じこもる実験をすることになった演劇サークルの面々。多少のいざこざはありながらも、和気藹々と練習をこなす日々でしたが、一人の女性メンバーが失踪したのをきっかけに、事態は動き始めます。
前半は割りと緩い雰囲気で話が続くのですが、私としてはそのだらだら感が結構ツボでした。ただし、緩いながらもところどころに伏線が散りばめられているので油断なりません。いわゆる読み返して二度美味しい作品。きれいに騙されてしまいました。
ミステリとしてしては若干アンフェアに感じられるところもあるかもしれません。物語の仕掛け的にやむをえないのですが、屋内のディテールをきちんと表現しきれなかったため、解決篇では唐突に感じられる部分も多少あったように思えます。
ただ、物語のまとめ方はお見事です。このようなクローズド・サークルものでそれっぽい臨場感を演出するのはかなりのスキルを要すると思うのですが、その点本作は無理せず無難なところに落としどころをもっていった印象です。こういう割り切ったアッサリ感はかなり私の好みです。
筆者のデビュー作「パララバ」を既読だったのに後から気がつきました。当時と比べると着実にレベルアップしているようなので、今後の作品にも大いに期待したいと思います。
評価:★★★☆☆
2011年3月3日木曜日
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