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2010年11月28日日曜日

折れた竜骨(米澤穂信) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

中世ヨーロッパが舞台ということでもう少し重い話かと思ったら、そうでもありませんでした。ボーイミーツガールっぽい要素もあって、気持ちよく読める作品です。メインの仕掛けも秀逸。エンディングもお見事。文句ありません。



殺された領主の娘、16歳のしっかりもの「アミーナ」がヒロインにして語り手となります。一人称のミステリということで、なんとなく警戒心を持ちながら読んでいたのですが、結局最後は気持ちよく騙されることになりました。

探偵役は東方からやってきた「聖アンブロジウス病院兄弟団」の騎士「ファルク」とその従士「ニコラ」です。魔法を駆使する「暗殺騎士」を追ってきた彼ら自身も対抗魔法の使い手とのこと。

魔法の設定で制約条件をつけるやり方は西澤保彦さんみたいだなと思っていたら、案の定あとがきでも触れられていました。こういう特殊条件をつけるミステリというのは私の大好物です。

デーン人の襲来に備えて雇われていた傭兵たちも、色々事情を抱えたものばかり。それぞれの事情が解き明かされていくクライマックスシーンもさることながら、胡散臭さを一転させる戦闘シーンでの大活躍はみな素敵でした。特にコンラートが良いポジションのキャラだったと思います。

駄目兄貴「アダム」との後継者争いっぽい話も出るかと思いましたが、それは次回にお預けでしょうか。そもそもあの引き方、このタイトルで次巻がないとも思えないので、座して待つことにいたします。シリーズ物の成長物語になってくれるようだと嬉しいですね。

評価:★★★★★

2010年6月26日土曜日

『ふたりの距離の概算』(米澤穂信) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

古典部に仮入部した「大日向友子」が入部しないといいだした。本入部届提出期限の今日はあいにくのマラソン大会。我らが「省エネ主義者」の奉太郎が、ちんたら走りながら後方スタートの関係者に聞き込みをしていく、らしいのからしくないのか分からない展開の古典部シリーズ第5段です。



刊行まで待ちきれなくて「野性時代」での連載を立ち読み(ごめんなさい)していたため、本書はお布施のつもりで購入したのですが、改稿が多くてかなり印象が変わりました。喫茶店のネーミングはなんとも恥ずかしいですね。クールな野暮天の奉太郎が当てきれなかったのも無理ありません。一部ネット上で過去作品と矛盾があると指摘されていた箇所も修正されているようでした。

加筆は終章の7ページですが、それだけでこれほど話が締まるとは思いませんでした。連載中は、正直ちょっぴり淡白だなと感じていたのですけれど、さすがのよねぽマジックです。作中のちょっと唐突だなと思っていた箇所についても、伏線がこまめに追加されています。

古典部の4人がかなり個性的というか難しい人間の集まりなため、ここに誰かが加わるのは想像しにくかったのですが、大日向さんはかなりいい感じの5人目候補だなと感心しました。ぱっと見たところ男と間違えそうな風貌に、古典部らしくない(?)明るくさばけた性格。かといって、やはり一癖ありそうなところはポイント高しです。マラソン中にお団子食べたいと言い出したのは超ツボでした。

大日向と関連して、新一年生の名前がいくつか出てきました。本作だけで立派に完結した一作ですが、シリーズ全体を通してみると、今後へのつなぎ的な意味合いのほうが強い作品なのかなという気がします。里志の妹は当然気になるとして、奉太郎がすっかり忘れていた「阿川」さんが今後からんでくるのかこないのか、わたし気になります。

前作遠まわりする雛で、ようやく少しは進展しそうかと思われた奉太郎と千反田の関係ですが、あいかわらず何ともかんともな感じですね。外堀から少しずつ埋まっている感はなくもありません。もっとも、微妙な関係の二人が仲良く無駄話をするところが本シリーズ一番の見せ場という気もするので、本人たちには悪いけど、しばらくこのままでもいいかなという気もします。

ちょっと気になったのは、奉太郎がもっていた小銭。20キロも走るので2本分用意していたのはいいとして、240円だと硬貨6枚です。なぜ250円じゃなかったのでしょう。それなら最初が3枚→1本買って4枚→2本目を買って1枚となって、片方のポケット最大2枚で済みます。こういう小賢しいこと、いかにもホウタローが考えそうなことじゃありません?私もジョギングするのですが、ポケットにいくら忍ばせておくかは結構気を遣うところなのです。

と、細かいところがいくつか気になったとは言え、しょせんは重箱の隅レベルです。本作自体の完成度に加え、続編への期待も煽られてとても楽しめる作品でした。何よりも重要なのは、古典部の4人があいかわらずの4人であったことです。この雰囲気が続く限り、私の古典部シリーズへの評価は常にMaxなのです。

評価:★★★★★