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2011年3月29日火曜日

小説家の作り方(野崎まど) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

どうミステリになるのかと思いながら読んでいた文章がことごとく伏線だったいう、あいかわらずお見事な手際でした。厳密にはミステリじゃないんですかね。小ざかしいジャンル分け不要の独自性に富んだ一冊です。



キャラクター作りが得意なファンタジー小説家「物実(ものみ)」が初めてもらったファンレター。お嬢様然とした彼女「紫依代(むらさきいよ)」に請われ、小説家になるための家庭教師を務めることになります。

美少女をマンツーマンで指導するという夢のようなシチュエーション。5万冊の読書量を誇る博識でありながら、随所に垣間見える紫の世慣れなさが、ただの伏線じゃなく萌えポイントにもなっています。

登場人物は全部で5人と、相変わらずのシンプル設定。なんというか、プログラマ的効率化精神の琴線に触れるといいいますか、あまりに無駄のない美しい話作りには、ただただ感服するばかりです。

タイトルが「小説」でなく「小説家」の作り方となっているのもポイントとなるでしょうか。ほかにもちりばめられた様々な伏線が、真実解明の段になって物語の風景を一変させます。

以下ちょっとだけネタバレ。既読の方だけ反転して読んでください。

二重のどんでん返しが秘められていましたが、結局紫がみせていた会話の間合いとはなんだったのでしょう。通信などは発生していなかったわけですから、色々解釈の余地がありそうです。

「お母様」を騙すために事前に施した細工の一つと考えることもできそうですが、私としてはあの間合いが「むらさき」の素だと解釈したいです。そのほうがいかにも萌えキャラっぽくていいですよね。

以上、ネタバレ終わり。

まだ筆者のデビュー作はタイミングがあわなくて読んでいないのですが、既刊4冊はいずれも単発ものです。野崎さんも物実と同じくとても魅力的なキャラクターを作る方ですので、できればシリーズ物もそろそろ読んでみたいなという気がします。

評価:★★★★☆

2010年10月27日水曜日

死なない生徒殺人事件―識別組子とさまよえる不死(野崎まど) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

なんというか、トリック自体は前作同様フェアじゃないのかもしれませんが、ミステリスピリットに満ち溢れています。読み返して二度楽しい伏線満載。相変わらず無駄を極力省いた構成も素晴らしいです。



永遠の命をもつという「識別組子(しきべつくみこ)」が首切り死体で見つかります。赴任してきたばかりの生物教師「伊藤」が、死んだはずの識別とともに事件の真相を追います。何を言ってるのか分からないと思いますが、本当にそういう話なのです。

重要な女性キャラが結構たくさん登場するのですが、なかでもヒロインの識別はクール系で実に良いです。表紙絵の女性は一番目の識別だと思いますが、この容姿の彼女がすぐに殺されてしまうというのは、映像化すると残念なことになりそうですね。

識別に極端な思い入れをみせる転入生の眼鏡っこ「天名珠(あまなたま)」。登場時点からいい味出したキャラだなと思っていましたが、彼女があのように事件に絡んでくるとは。何かあるとは思っていましたが、予想の遥かに斜め上でした。

私的に一番つぼのキャラは、広末涼子似だという物理教師の「受村(うけむら)」先生。彼女がいるとのことでしたが、どんな彼女なんでしょう。というか、受村に彼女がいるのは矛盾してる気がしますが、そういう設定ということでしょうか。

とにかく読み終えてから振り返ってみると、あれもこれも伏線だらけ。作品タイトルについても、なんとなくスルーしていたらとんでもない意味が込められていました。メインのネタ自体は、厳密に言えば粗があるような気がするのですが、些細なことはスルーして、独特の野崎ワールドに浸るのが良い読み方でしょう。

評価:★★★★☆

関連レビュー:
舞面真面とお面の女(野崎まど)

2010年9月16日木曜日

舞面真面とお面の女(野崎まど) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

ミステリテイストの作品ですが、ミステリと思って読むと当てが外れるかもしれません。このオチは人によっては窓から放り出したくなるかもしれませんが、私は結構好きでした。是非とも続刊が読みたいです。



メディアワークス文庫の作品を手にとるのはこれが2冊目。1冊目が有川浩さんの「シアター!」ですから、MW文庫らしさというものに触れるのはこれが初めてといって良いかもしれません。なるほど、一般小説とライトノベルの狭間にあるような作品です。

叔父「舞面影面(まいづらかげとも)」の依頼をうけた「舞面真面(まいづらまとも)」は、従妹の「舞面水面(まいづらみなも)」とともに、曾祖父の遺品の謎に挑むことになります。ついでに叔父が雇った探偵もひとり協力することになりますが、彼が最後でああいう役回りになるとは思いませんでした。

真面が大学院修士課程の23歳、水面はその一つ歳下ということで、年齢設定にもこのレーベルの性格が現われているようです。水面が真面をちょっと気にしてる感じの、ありがちかつ鉄板な設定なのですけれど、そこにお面の女がどういう風に絡んでくるかということです。

トライアングルなモニョモニョ展開は、少なくとも本巻においてはありません。どちらかというと、お面の女が水面を応援するために色々画策するような感じです。お面の女の正体を話すとネタバレになってしまいそうなので避けますが、要は中学生の制服を着て、大人びた口調の女だということです。

オチが結構微妙かもしれません。私としては結構きれいに終わってるなと思ったのですけれど、ミステリの先入観で読み進めると、壮絶な肩透かしを食らうような気がします。私は続巻をとても期待したいのですが、どういう展開を期待しているのか明かすとそれもネタバレになってしまいそうで、レビューを書くにはなんとも厄介な作品といえます。

登場人物も少なめのシンプルな話なので、読み応えという点ではそれほどでもないですけれど、その分気楽に読めるということはあると思います。切った張ったのない、静かでちょっと不思議な作風はかなり私好み。お嬢様風の水面もなかなかの萌えキャラなので、ライトノベルファンにも結構お勧めできるかと思います。

評価:★★☆☆☆