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2010年12月22日水曜日

叫びと祈り(梓崎優) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

このミス3位をはじめ、新人でありながら各ミステリランキングの上位を占めた話題のミステリ短編集。外国を舞台にした雰囲気ある舞台設定に加え、SFというかホラーっぽい要素も入り混じり、なんとも独特な世界観を作り上げています。専門筋の評価が高くなるのもわからなくはありません。



世界各地を取材して回る雑誌記者「斉木」が主人公となります。一応彼が探偵役ということになりますが、それほど名探偵っぽい感じではありません。どちらかというと巻き込まれがたで、彼が出くわすのは「事件」というより「困難」です。

本書の特徴のひとつは、斉木が取材して回る各地域の文化や風情がミステリに色濃く反映している点です。アフリカの砂漠やらロシア正教の教会やらアマゾンの奥地やら、それらの舞台がミステリの材料として実に巧みに活かされています。

作風としてはいかにも創元系っぽいなという感じです。ミステリファンが好みそうな雰囲気ある作品。ただし、それだけにはとどまらない、一風変わった隠し味が各話のラストで待っています。ちょっとアンフェアな感もあるため評価は分かれそうですが、良くも悪くもこの部分が本書の強烈な個性となっています。

もっともその個性の部分、私としてはちょっと苦手な感じがしました。文体についても読みやすいとはいいくにですね。文章が下手ということは決してないのですが、説明されたシチュエーションが頭のなかに入ってきにくいなという印象が常にありました。

佳作といわれれば同意できるのですが、各種のミステリランキングで上位に入っているのは、個人的には少し不思議な感じもします。確かに新人さんの作品としては良くできていると思うのですが・・・

ただ、ミステリ玄人の方々が本書を高く評価したがる気持ちもわかるような気がします。なにしろ本格ミステリの枠にありながら非常なユニーク性を併せ持っているため、その部分が変にこなれてしまうのはもったいないと思えてしまうのかもしれません。確かに稀有な才能という点では全く異論ありません。

キャラ読み、ストーリー読みの私としては、斉木にもう少し色がついてくると嬉しいかもしれません。本書ではちょっと透明人間っぽかったので。もっとも、そうなると作品のイメージががらっと崩れてしまいそうな気もするので、なかなか難しいところですね。

評価:★★☆☆☆

2010年12月7日火曜日

放課後探偵団(相沢沙呼, 市井豊, 鵜林伸也, 梓崎優, 似鳥鶏) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

好きな作家を追いかけるタイプの私としては、複数作家によるアンソロジーという形式はあまり好きではないのですが、今回は似鳥鶏さんの新作がどうしても読みたくて手にとってみました。大きなはずれのない作品集だったのでほっとしましたが、やはり雑多なのはあまり好みではないかもしれません・・・



タイトルからして学園物ばかりかと思いきや、大学生や果ては三十路のオッサンが主人公の渋い作品まで紛れ込んでいます。似鳥さん以外では、梓崎優さんの作品を読めたのは収穫ですかね。以下、各話の感想です。

■ 似鳥鶏「お届け先には不思議を添えて」
柳瀬先輩も翠も登場しない代わりに妹がちょい役で出てきてヒロイン分を補ってくれます。食事シーンには性格が現われる?ミステリとしてもなかなか良かったです。

■ 鵜林伸也「ボールがない」
何か色々と無理がありそうな話という気はしましたが、公立の高校野球強豪校という舞台は門外漢として興味深い設定でした。長編でじっくり話を作ってもらった方が味が出そうな印象。

■ 相沢沙呼「恋のおまじないのチンク・ア・チンク」
「午前零時のサンドリヨン」のシリーズだそうです。噂には聞いてましたが、この主人公は結構読む人を選びそうですね。私は駄目でした。こういうタイプの少年主人公は、同性視点からだとちょっとしんどい気がします。

■ 市井豊「横槍ワイン」
ちょっぴりご都合主義な結末。でもそれがいいですね。ミステリとしてのリアリティはともかく、骨格がしっかりしてるのが好印象。何作か雑誌で掲載されている「聴き屋」シリーズの作品なのだそうです。近々本になりそうなので、これは買うかもしれません。

■ 梓崎優「スプリング・ハズ・カム」
ミステリとしてフェアなのかどうかは微妙ですが、本書で一番「おっ」とさせられた作品。短編という制約のなかでこれだけしっかり伏線が練りこまれているのはお見事。評判のよい「叫びと祈り」にも俄然関心がわいてきました。

それなりに収穫は多かったものの、やはりアンソロジーへの苦手意識はぬぐえずじまい。個々の作品がどうこうと言うより、流れが断ち切られるような感じがしてしまうのですね。私は本読みとして視野が狭すぎるのかもしれません。

評価:★★☆☆☆