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2010年8月24日火曜日

街場のメディア論(内田樹) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

日ごろ、もやもやと感じていたものをすっきりさせてくれること多々。現状認識力がすさまじいなと感じます。文章も非常に読みやすいのですが、読みやすいだけに油断なりません。私にとっては雰囲気に流されることを戒めて臨まなければならない本でした。



メディア批判を読んでいて、なにかボタンのかけ違いのようなものを感じました。プロ意識を持たない現在のメディアを、具体的な例を挙げながら批判しているのですが、良く考えたら一般庶民の私にはあまり関係ない話しですね。もともとは、メディア関係の志望者も多いと思われる授業で語られた内容なので、誰もが真似をする必要はないことだと悟ってほっとしました。

それだけに、一般人の言動にまで立ち入った2ちゃんねる批判については首を傾げたくなります。
「名無し」が語っている言葉とは「その発言に最終的に責任をとる個人がいない言葉」ということになる。(P95)
全くその通りで、だから2ちゃんねるでは「嘘を嘘と見抜ける人でないと難しい」という言葉が金言扱いされています。その「名無し」達に対して
だって、その人は「私が存在しなくなっても誰も困らない」ということを堂々と公言しているからです。(略)そのような名乗りを繰り返しているうちに、その「呪い」は弱い酸のようにその発言者の存在根拠を溶かしてゆきます。(P96)
なんてことを高みから言われても、そこは発言者達自身がそれでいいと思っていることじゃないですかね。お前にそこまで立ち入られる理由はないと。正しいか間違っているかは別にして、生理的な反発を覚えます。

著者の「市場」嫌いについても、私はあまり受け付けません。医療や教育の現場における過度な市場主義の弊害については、なるほど同意できるところです。でも、市場性を排したら全てがうまくいくというわけではもちろんないですよね。非効率や悪弊の横行といったものが当然予測されるわけで、結局は何がしかのトレードオフの関係になってくると思います。

全般に筆者の現状認識力はすばらしく、まさに蒙が啓かれた気持ちになるのですけれど、その解決のところになると、どうしても懐疑的な気持ちのほうが先にたってしまいます。贈与経済の話しとかされだすと胡散臭さが倍増。私も大学時代はマルクス系の先生についていたので、その頃ならもっと素直に読めたかもしれませんね。市場主義に浸りきった社会人にはちょっとしんどい。

本書を読む上で心がけてほしいのは以下の2点。一つ目は、文章中で行われている批判と自分自身との位置関係を的確に見極めること。二つ目は、現状認識についての言説と解決策のロジックを分けて受け止めること。とにかく読みやすい文章なので、さらっと流されてしまうと大変です。平易な文章の割りに、内容をきっちり把握しきるのは難しい本だと感じました。

評価:★☆☆☆☆

2010年5月10日月曜日

「日本辺境論」(内田 樹) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

辺境であるがゆえに生まれる日本の特殊性について綴った作品。筆者自身もおっしゃられている通り、新味はそれどほどない内容かと思いますが、「日本の思想」的なものについて論じた本を読んだことのない方は、一度本書に目を通しておいたほうが良いのではないでしょうか。良書だと思うけど、実は読んでて少々眠くなりました、ごめんなさい。



初っ端から引用の引用という筋の悪いことをして恐縮ですが、
日本人にも自尊心はあるけれど、その反面文化的劣等感がつねにつきまとっている。(中略)おそらくこれは、はじめから自分自身を中心にしてひとつの文明を展開することのできた民族と、その一大文明の辺境諸民族のひとつとしてスタートした民族とのちがいであろうと思う。(P21)
という「文明の生態史観」(梅棹忠夫)からの引用が、本書の要約になるとのことです。このことについて、事例を色々挙げながら解説、というより念を押し続けていっています。

一例を挙げると日本という国名、日の登るもととなる国ということですが、これは日本を東側に置く中国視点の命名です。大国との相対的な位置でしかアイデンティティを決められないのが辺境の国、日本だということです。

こういう日本人の困ったところは、主張に理屈が無いところ。外国ではこれこれだからこれで間違いないんだという、ロジックを突き詰めず他人に依存するメンタリティこそがいかにも日本人らしい特徴となります。

昨今話題の普天間についてもそういうところがありますね。アメリカの顔色と当事者の声にはさまれて右往左往している様子の中には、こういう理屈だからこうあるべきなんだという視点がかけらも混じっていないようです。

筆者はこのような性向を悪いものとばかりは見ていません。外国文化の許容に対する柔軟さや・・・うーん?このレビューを書くためにパラパラ本を読み返しているんですが、日本人の何が良いのかいまいち良くわかりませんね。

筆者は「日本の辺境性は悪いことではない」とところどころ言っているのですが、少なくとも悪くは無くても格好悪い気はします。私の読みが浅いだけなのでしょうが、ほんとはこの本って馬鹿な日本人を笑ってるだけな気がしてきました。

一応最初に主張らしきものを出しちゃって、その後延々とそれについて補強していくスタイルの文章なので、私は正直読んでて眠くなりました。大昔に読んだ(はずの)「日本の思想」とか「菊と刀」あたりがまだ頭の片隅に残っていたためですかね。あまり知的刺激を感じられなかったからかもしれません。

ただ、日の丸や君が代を礼賛しているその根拠はナンですか?というあたりのくだりはとても共感がもてました。自分自身の言論を見つめなおすというのは、いかにも日本人の苦手っぽい気がしますね。空気に流されがちなネトウヨさん達(私もその気があるけど)は気をつけたほうが良いですよ。


評価:★★☆☆☆

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