2011年3月10日木曜日

大絵画展(望月諒子) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

医師ガシェの肖像」にちなんだ美術ミステリ。正直、最初は読み進めるのが苦痛で仕方なかったのですが、後半になってからは雰囲気が一転します。ミステリとしてのプロットは素晴らしいですが、読み方によって評価が大きく分かれる作品かもしれません。



第14回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作なのだそうです。新人さんなら多少構成が稚拙なのも仕方ないかと思っていたら、既に何冊か本を出しておられる方なのですね。うーん。

ものすごくおおざっぱに説明すると、詐欺被害にあった人たちが協力して仕返しをするというストーリーなのですが、出だしのぐだぐだ感はただ事ではありません。

被害者たちの背景が結構綿密に描かれているのですが、リアル感と読みやすさのバランスが決定的に欠けているように思いました。それが延々と続くので、ほんとどうしようかと。

ところが実際に仕返しする段になって、話が大きく展開します。クライマックスにおける二転三転のどんでん返しはお見事の一言。私としては、他のあらゆる欠点を取り戻してお釣りがくるくらいでした。

もっとも、それで素直に収束してくれないのも、この作品の難しいところです。ラスト数十ページの蛇足感は非常にもったいない。三分の一くらいにまとめられなかったものでしょうか。

個人的にはミステリとしてのプロットだけでもこの作品を評価したい気持ちがありますが、これを人に勧められるかとなるとちょっぴり難しいです。面白くなるところまでにどれだけの人がついて来られるのか・・・

際物好きのミステリファンにはかなりお勧めです。私は筆者の短編ならもう一度読んでみたいかも。長所と短所が極端に入り交じった印象なので、一つ掛け違えるとものすごい傑作になりそうな気もします。

評価:★☆☆☆☆

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