なんとも評価の難しい作品ですが、ポアロ嫌いな人にはお勧めです。9割くらいまで読んだ時点でビッグ4並みの駄作だと思っていたら、最後の最後で実にクリスティらしい怒涛の展開が待っていました。
とにかくポアロが後手に回り続け翻弄されまくるので、アンチポアロの方には溜飲が下がるのではないでしょうか。名探偵の面影一片もなし。いつもながらのちょっと鼻につく自画自賛が、愛嬌でなくうっとうしく感じられてしまいます。
ヘイスティングズが登場すると、ポアロのそういう側面が際立つような気がしますね。ポアロ自身にとっては肝胆相照らす無二の親友だとしても、読者にとっては彼の負の側面を写す出来の悪い鏡のような存在という気が・・・
真犯人については私もなんとなく感づいていましたが、動機やその他の周辺事情が一気に押し寄せてくる最終盤の展開はお見事でした。途中のグダグダだった捜査過程を一気に吹き飛ばしてくれたと思います。
ただ、正直この話は「ポアロ最大の失敗」とサブタイトルをつけても良いくらい、ポアロにとって最初から最後まで冴えない事件でした。殺人事件にしたところで、結局ポアロに責任の帰するところがかなり大きかったように思いますし。
以下、ネタバレになるので既読の方のみ反転でお願いします。
ポアロが裏をかかれまくっている時点で、犯人はあの人意外ありえないなとは思っていました。ただ、動機については全然想像がつかなかったので、真相についてはかなりびっくりさせられました。
しかし、マギーの本名についてはフェアといって良いのでしょうかね。一応伏線らしきもののも仕込まれているとはいえ、人によっては頭にきてもおかしくないレベルと思います。私は「フェア」にあまりこだわらないので素直に楽しめましたが。
本書で感心したのは、クライマックスでの畳み掛け方。遺言状の件、窓ガラスの不審人物の件、そして事件の真相が次々と個別に明らかになっていく展開はお見事としか言いようがありません。
それぞれの状況が事件を複雑にしてしまう手口はクリスティ十八番のパターンといって良いと思いますが、本作でもそれが見事にはまったように思います。最後の腕時計の演出もお見事でした。
話の展開はいまいち、謎解きは秀逸という、実に評価の難しい作品です。ただ、個人的にはトリックのためだけにミステリを読んでいるわけではないので、あまり高い点数はつけられないかなという気がします。できれば格好良いポアロが読みたいのです。
新訳版も最近出ているみたいですね。
本書の訳ではヘイスティングズの口調などちょっと気になるところもあったので、新しいほうについても機会があれば目を通してみたいです。できればタイトルも創元推理文庫版の「エンド・ハウスの怪事件」に戻して欲しかったかなぁ・・・
評価:★★☆☆☆
2011年6月16日木曜日
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