2011年6月11日土曜日

真夏の方程式(東野圭吾) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

「ガリレオ」シリーズ最新作です。偏屈な科学者キャラの湯川が、夏の田舎町で知り合った少年と実験に勤しむ様子は「らしい」のか「らしくない」のか。おや?と感じるところも多少ありましたが、話の枠組みとしてはとても良かったと思います。



路線変更というわけでもないのでしょうけれど、今までのシリーズ作品と比べると少し趣が異なります。従来のファンからすると賛否あるところかもしれませんが、個人的には人情系の話が嫌いではないのでとても楽しめました。

草薙や内海もしっかり活躍していますが、湯川と直接絡む機会が少なめだったのはちょっと残念です。とはいえ、今回の話の作りからいえばやむをえないところではありますが。旅先の妙齢の女性とも全く何も起こりそうにない素っ気無さは相変わらずです。

ところどころに織り込まれた印象的なエピソードが、事件の重大な伏線になっているのは流石の手際。ただ、少し疑問に思う点もなくはありませんでした。以下ネタバレなので、既読の方だけ反転でお願いします。

まず、成実が起こしたという事件の話。結構重そうな雰囲気を仄めかせていたので、その点の説得力では問題なかったのですが、普通の中学生があの状況ですぐに人を刺し殺そうとまで思いきれるのかについては疑問に思います。

しかも、散々迷って追い詰められた後ならともかく、相手が出て行った後をわざわざ追いかけてすぐにブスリですからね。お前どんだけ沸点低いんだという感じで、割と良識的にみえる普段の言動と、かなりギャップを感じました。

それと事件の幕引きについて。湯川はわかったことを草薙たちに全部話すといっていたはずですが、煙突の蓋の件が明らかになれば流石に警察は見逃せないと思うのですが。仮に話していなかったとしても、実験で現象を再現できなかった時点で全てわかっていそうな湯川に話がいくのは確実なはず。

それ以前に、未必の故意とはいえ、明確な意図をもって恭平に指示を与えたであろう重治の罪が見逃されるのは、やはり釈然としません。一人の少年の将来を慮ったとはいえ、結局今回の選択の結果にしても恭平が心に傷を負ったことでは変わりないと思うのですが。

といように、ちょっと納得いかない点がいくつかあったのは確かですが、話の方向性自体についてはとても楽しめました。海辺の町における少年との一夏の邂逅。湯川シリーズらしい作品とはいえないかもしれませんが、筆者の狙った意図は十分成功しているのではないかと思います。

というわけで、おおむね満足できる作品ではありましたが、次はもう少し本シリーズらしいところも読みたい気がします。内海刑事とももっと絡んで欲しいですね。というか、きゃっきゃうふふするために無理して出した女性刑事だと思ってたんですが、そういうところのらしさだけは貫かれ続けるのでしょうか・・・

評価:★★★☆☆

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