2010年12月20日月曜日

群衆リドル Yの悲劇’93(古野まほろ) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

初の古野まほろ作品。登場人物に感情移入しにくくて、前半はちょっとしんどかったのですが、人が死に始めてからはスピーディーな展開でよかったです(嫌な言い方だけど)。古き良き本格ミステリといったところでしょうか。



東京が帝都だったり、時代が1993年だったりするのは、他の作品と共通する世界観に起因するものでしょうか。他にも裏設定らしきものがちらほら見え隠れして、若干もやもやが残るところはあります。

そういう意味で初めて読む筆者の作品としてはあまり相応しくないのかもしれませんが、話の骨格を阻害するほどのものではありません。少なくともミステリの骨子となる部分については違和感なく楽しめました。噂に聞く当て字やルビなども、特に変わったところなくとっつきやすい感じです。

閉ざされた館で人が次々と殺されていき、そして読者への挑戦状。作風自体も'93という時代背景を意識したものになっているのですかね。いかにも90年代ミステリといった趣で、好きな人にはたまらないのではないかと思います。

ちょっと癖のある探偵役には賛否が分かれそうな気がします。私はちょっと苦手かも。肝心のミステリネタについても色々無理があるような気はするものの、ミステリ的お約束の範囲内には収まっているのではないかと思います。

最近はすっかりキャラ重視、ストーリー重視になってしまっているので、もう少し若い頃に出会えていたら手放しで賞賛できたかもしれません。とはいえ、事件への前振りから連続殺人、そして解決編までの流れは実にお見事。尖がった探偵小説好きであれば存分に楽しめる作品ではないかと思います。

評価:★★☆☆☆

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