現場から事務方への異動を命じられた入社4年目の若手社員「富島平太」。彼の行く先である業務課は談合担当の部課だった。「平太」の目を通して複雑で歪んだ業界のあり方が描かれますが、単純にゼネコン=悪の図式にはおさまりません。そこで働くプロフェッショナルたちは実に格好いい。全体的にすっきりした印象を残す好作品です。
父がゼネコン勤めだったため、あまり「ゼネコン」というものに悪い印象を持っていません。食べさせてもらった恩といいますか。私の父は現場の人間でしたが、本作品はまさに「巨悪」の象徴たる談合担当者たちが主人公となります。
業界の問題点には切り込みつつも、そこに働く人々はむしろ好意的に描かれています。特に一目にはパッとしないエース「西田」の格好いいことといったら。そのせいか、作品全体を通してそれほど泥臭い印象はありません。
池井戸氏といえば「銀行」ですが、ちゃんとでてきますよ。主人公「平太」の彼女「野村萌」が行員です。もっとも、絡み方はちょっとご都合主義っぽかったですかね。もう少し園田がしつこく絡んでくるかと思いましたが。
それにしても萌ちゃん、ちょっと都合いい感じ。未熟な「平太」に苛立つ気持ちはわかりますけれど。はっきりしないのも優しさってことですかね。
おそらく本当の現場ってのはもっとえげつない世界なのかと思いますけれど、小説としては本作くらいのバランスでちょうど良かったのではないかと思います。ゼネコンマンが格好良く描かれていたのが、とにかく私には好印象でした。
評価:★★★☆☆
2010年5月14日金曜日
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