人が割とガンガン死ぬ、シビアな「パトレイバー」。私はあまり合わなかったけど、ハードボイルドな感じが好きな人にはすごくハマるかもしれません。
本作のようなロボットものだと、「パトレイバー」とか「フルメタル・パニック」とかの名作が過去にあるので、オリジナリティを出すのが大変そうではありますね。
作者の月村氏は、脚本家としてはかなりのキャリアを持つ方だそうです。これが小説デビュー作とはいえ、なるほどこなれた印象を受けます。ただ、話全体のカタルシスをどこに求めるかという点で、若干私の好みには相容れませんでした。
3台の「龍騎兵」に搭乗するうちの誰かがはっきり主人公キャラなら分かりやすかったのですが、ちょっと焦点がぼやけてしまったように感じました。また、たくさんの登場人物すべてにエピソードをつけようとした分、濃度が薄まってしまった印象もあります。由起谷や夏川のエピソードは次巻以降にまわしてもよかったんじゃないでしょうか。
最初に一般人が遠慮なく死んでいるので、そういう作品かと心構えをして読み進めていったのですが、その点で若干の物足りさも感じました。やるのならもっと弾けてほしかった気もしますが、あまりハード過ぎるのは最近受けなさそうだから、仕方なかったのかも知れませんね。むしろ校正が入ってぬるめられてしまったのかも。
それぞれの登場人物はなかなか味があってよいなと思いました。ただ、ちょっと色っぽいところも欲しかった気がしますね。姿なんかは、いかにも懇ろな女性の一人や二人いてもおかしくないキャラだと思うのですが。ヒロイン候補の緑ちゃんにも、そういう方面の色がまったく見えませんでしたね。
ちょっとネガティブな意見が多くなってしまいましたが、話し自体の完成度は高くて読みやすい小説です。あちこちに飛ばしたネタをまとめ上げる手腕には感心しました。個人的に合わなかっただけで、客観的に見れば水準以上の作品ではないかと思います。色々と明かされない伏線も仕込まれているようなので、続巻を待たないと正当な評価はできないかも知れません。
評価:★☆☆☆☆
2010年5月24日月曜日
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