自然災害としての怪獣対策を行う「気象庁特異生物対策部(気特対)」の活躍を描く怪獣SF小説。私は怪獣とか特撮とかの属性がないひとなので、単行本発売時には敬遠していたのですが、怪獣好きじゃなくても普通に楽しめました。5編の連作短篇形式で、実に取っつきやすく読みやすい構成になっています。
MMとはモンスター・マグニチュードのこと。怪獣の体格から予想される危険度の規模に応じてMM0からMM9までランクづけされます。地震のようですが、実際に「気特対(きとくたい)」の任務となるのもMMの特定と怪獣の進路予想となります。怪獣が純粋に自然災害としてとらえられているのが面白いところです。予測を外して非難されるというどこかで見たような光景も日常茶飯事。
正確な情報を収集して自衛隊に渡すのが任務で、「気特対」自体は直接の攻撃手段を持ちません。そのあたり、特撮物のナントカ隊とは全然役割が違います。ただし接近して映像をとらないと正確なデータがとれないため、前線任務はかなり危険です。その前線を担当するのが「機動班」。本書の主役的存在となります。
「機動班」は5人で構成されています。紅一点の存在といい、これはヒーロ戦隊物を意識した構成だなと思っていたのですが、最終話で事件が落着した後の最後の数ページ、そういう意味付けに持っていくのかー、とちょっと震えてしまいました。
怪獣の種類も多彩ですが、どんな怪獣が現れるのかはネタバレになるのでここでは明かしません。特に2話目は凄いです。どう凄いって、そのまま映像化すると、児童なんとか法的にヤバいような凄さです。
怪獣ってデカいわけですが、物理法則的にはそれだけデカくてあれだけ動けるのは有り得ないわけです。そのあたりの理屈を「人間原理」という理論で説明しています。人間が観測する形で物理法則が決定するという理屈です。SF特有の量子論的なお約束を理解できていればすんなり納得できると思いますが、別に小難しいことは分からなくても充分楽しめると思います。
災害対策に立ち向かうレスキューもの的な王道の面白さがある半面、怪獣を退治(あるいは保護)するために真剣になっているようすは、なんともいえないギャップのあるおかしみを醸し出します。加えて、それらを解釈するSF理論的世界観。SF好きにもそうじゃない人にも満足できる、かなり万人向けな作品になっているように思います。
評価:★★★★☆
2010年7月12日月曜日
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