入学して知り合った大学生5人のお話し。春、夏、秋、冬の4編で構成されています。合コンとか麻雀とか学園祭とか、パーツだけみるとただのありきたりな青春小説ですが、全体を通すとしっかりミステリになっています。本当の超能力者が気楽に出てくるのもいかにも伊坂節という感じ。各話ごとにそれなりに話がまとまっていて、落ちもしっかりついているのが良かったです。
大変評判の良かったゴールデンスランバーが私には少し肩透かしに感じたのは、最後の締め方が曖昧に感じられたからだと思います。はっきりさせない文学性みたいなものは理解できるのですが、未熟な本読みの私はなかなか楽しめません。
本作は、オチがしっかりついていたのでとても読後感がすっきりしました。各話ごとにそれなりにまとまっていますし、全体を通しての謎や伏線もしっかり回収されていたように思います。
ラブコメ分がかなり強いのですが、男性3人、女性2人のグループにもかかわらずドロドロした展開が一切なし。最終的に成就するかどうかは別として、それぞれの想い人がきっぱりはっきり分かれていて、ラブコメ好きな人にはむしろアッサリしすぎて物足りないかもしれません。
一応、作品全体を通してのミスディレクションっぽいものも仕掛けられてはいるのですが、そちらは若干蛇足っぽい感じがしなくもなかったです。本来の私はこういうトリック大好物のはずなのですが、素の内容が魅力的過ぎたせいかもしれません。
正直、私はあまり真っ当な青春小説というのは得意ではないのですが、本書の場合はミステリとか超能力とかの非日常が絶妙に織り交ぜられているため、抵抗感なく読めました。色々な意味で完成度の高い作品だと思います。
評価:★★★★☆
2010年7月5日月曜日
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