新本格の皮をかぶった青春小説の傑作。しかし、序盤は読むのが結構しんどいです。あとで明かされる事実を踏まえると読み方がガラッとかわってしまいます。なんだか超能力っぽいものも出てきますが、収束には思わず唸らされてしまいました。読後感もさわやかなすばらしい作品です。
申し訳なくも、読み始めはいかにも新人が書いたっぽい出来損ないという印象でした。この分かりにくい、いやらしい感じの文章が、単に下手なのか計算なのかを見極めてやるつもりだったのですが、読み進めていくうちに脱帽しました。
本書と印象の似ている作品を上げるとすると、学校を出よう!とか戯言シリーズなんかになるでしょうか。学園もので、ミステリテイストで、超常現象もあり。ライトノベルやSFっぽいのが好きでない人にはちょっとしんどいかもしれません。
とにかく、途中の青臭い議論とかは黙って耐えてほしいところです。多分に計算が入っていますから。ラストあたりでガラッと印象が代わると思いますので、是非頑張って最後まで読んでください。二週目必読と呼ばれる作品は多くありますが、本書ほどその言葉がふさわしい作品もないでしょう。読了後すぐに丸まるもう一度読んでしまった作品は本書くらいかもしれません。
本書は10年ほど前の横溝正史賞最終選考作品の文庫化だそうです。商業的には失敗だったなどとあとがきでは書かれていますが、メフィスト賞あたりで出てれば結構ヒットしたような気がします。文庫化に時間がかかったのは作者が続編を書かなかったためだそうですが、いよいよ本年中に続編が刊行予定とのこと。とても楽しみでしかたありません。
評価:★★★★★
2010年7月27日火曜日
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