領地を追われた公爵やその娘「ロザリンド」、兄に疎まれた騎士の三男「オーランド」らがアーデンの森で繰り広げる牧歌的な馬鹿騒ぎ。なんともストーリーの説明しにくい恋愛喜劇です。やはり読み物というより劇として観るものという気はしますが、独特のめまいがするようなユーモアに、道化たちの口を借りた風刺が加わり、なんともいえない読み味の作品でした。
恥ずかしながらシェイクスピアをちゃんと読むのはこれが初めてです。本当は、「ローマ人の物語」のカエサル編つながりで「ジュリアス・シーザー」か「アントニーとクレオパトラ」を読みたかったのですが、あいにく置いてなかったので代わりに手にとった次第です。
単純に「オーランド」と「ロザリンド」のラブストーリーかと思っていたら、ヒロインが思いのほかぶっ飛んでいました。安全のため森では男装しているわけですが、そのとき出会った「オーランド」に、自分を「ロザリンド」と思ってくどいてみろとか、わけわかりません。それに乗って男(と思っている)相手に口説きの練習をする「オーランド」も相当ですが。
さらには自身に恋心を寄せてきた羊飼いの娘に対して遠慮のかけらもなく「不細工」呼ばわり。もっともそれで一層うっとりするんだから、何かのプレイの様相です。とにかく初見で深窓の令嬢かと思っていたら、すっかり騙されました。
他にも何組かのカップルが登場するのですが、総じて一筋縄ではいかない人達ばかりです。一応本筋としてはたくさんのカップルが無事婚姻するということになりますが、彼ら自身が変人ばかりの上、道化たちが皮肉な言葉でかき混ぜます。何を楽しめばいいのかよく分からないのに、なんとなく楽しいお話しでした。
やはり劇としてみるのが本当なのでしょうが、文章だけでも結構よかったです。ただ、若干皮相的なところが鼻につかなくもないので、もうちょっとストレートな話も読んでみたいですね。悲劇は苦手なので避けるとして、「夏の夜の夢」とか「じゃじゃ馬ならし」とかになるんでしょうか。
評価:★★☆☆☆
2010年7月19日月曜日
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