2010年7月29日木曜日

『ローマ人の物語〈15〉パクス・ロマーナ(中)』(塩野七生) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

前巻レビューで、ローマ人は血にこだわらないなんて書いてしまいましたが、少なくともアウグストゥスについてはとんでもない誤りでした。やはり、カエサルと比べると人間的な魅力では随分劣る印象です。本巻は地味な内政の話ばかりでつまらないなぁと思っていたら、次期皇帝ティベリウスとの確執あたりで面白くなってきました。



カエサルがあまりにも男前過ぎたので、ローマ人の気質というのがそう言うものなのかと思っていましたが、アウグストゥスは典型的な権力者の一面を見せてくれるので、逆にちょっとほっとしたりもいたします。堅物で血にこだわる人だったようですね。

次期皇帝となるティベリウスですが、彼は奥さんの連れ子でアウグストゥスと血のつながりがないため、当初は後継者と目されていなかったようです。血のつながりだけで言うなら彼の弟ドゥルーススも同様なのですが、こちらはアウグストゥスのお気に入りだったようで、彼の早すぎる死で緩衝材が不在となったためか、ティベリウスとアウグストゥスの仲は一時険悪になってしまいます。

ティベリウスは後の巻の「悪名高き皇帝たち」で紹介されるていることもあるため、愚帝の先入観を持って読んでいたのですが、実は有能な人物だったようです。軍事音痴のアウグストゥスに変わり、弟ドゥルーススとともに軍事面トップのアグリッパをよく支えたようです。

アウグストゥスの一粒種ユリアをあてがわれなかがらも強引に別れさせられた前妻を忘れられず、追い打ちをかけるように仲の良かった弟ドゥルーススが死んでしまったことにより、ティベリウスは世を儚んで隠遁生活に入ってしまいます。その彼がどういった経緯で次期皇帝となるかが、次巻で明かされます。

評価:★★★☆☆

続巻:
『ローマ人の物語〈16〉パクス・ロマーナ(下)』(塩野七生)

関連レビュー:
『ローマ人の物語〈14〉パクス・ロマーナ(上)』(塩野七生)

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