藤原伊織氏最後の長編となるそうです。流通業界、とりわけコンビニにおけるフランチャイズ問題に焦点をあてつつ、アウトローな主人公「堀江」が、かつての同僚「柿島」の死の真相を追います。
前作を読んだのが何年も前なので内容がすっかり抜けていましたが、本作だけでも特に問題なく読めました。とはいえ、未読の方は当然「てのひらの闇」から読んでいただいたほうが良いです。これが最後ですか・・・残念ですね。
ハードボイルドな展開と主人公の鬱屈。まさしく伊織節の作品と言えます。脇を固めるキャラたちも魅力的です。特に二部上場企業の社長でありながら渋くてお茶目な「三上」、彼みたいな格好いい爺さんを描くのが本当に氏は上手でしたね。
コンビニ業態の問題が深く絡んでくるのかと思ったら、それ程でもなかったですね。味付け程度といった感じで、その点は若干物足りなく感じました。あまり書くとネタバレになってしまいますが、もう少し社会悪に踏み込んで欲しかった気はします。
ハードボイルドな作品の割には、敵役がいまいち物足りない印象も感じました。ただ、シリーズ2作目ということで若干手加減が入ったのかなという気もしなくもありません。続編が出れば凄いシリーズになったかもしれませんが。
ちょっととうの立ったヒロイン「大原」との関係についてもそれは言えますね。ラストでちょっぴり何かが進展しそうな引きでしたが、それだけにここで終わってしまったことが残念でなりません。
元は雑誌連載の本作品、全38章中8章まで改稿したところで、筆者は力尽きてしまわれたそうです。返す返すも残念で仕方ありませんが、それでも藤原伊織のハードボイルな世界が好きな方には文句なく楽しめる作品だと思います。
評価:★★☆☆☆
2010年7月21日水曜日
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿