2010年7月8日木曜日

『グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉』(飛 浩隆) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

ゼロ年代ベストSF第2位の作品ということで挑戦してみました。ちょっと私の好みからすると重いですかね。ただ、世界観などがまだ十分に明かされていないため、1巻だけではなんともいえないなという印象です。



舞台となるのはバーチャルリゾートのひとつ「夏の区会」。よりリアルなセカンドライフみたいなものでしょうか。ただし「大途絶」後の1000年間、ゲストが訪れていない閉塞した世界です。とある日、「蜘蛛」が現われて区会を破壊し始めます。世界の終わりに対抗するすべはあるのか。「鉱泉ホテル」に立てこもり、生存をかけた戦いが始まります。

バーチャル空間という設定自体は今となっては珍しくないのかもしれませんが、リゾート空間としての「夏の区会」の特徴が徐々に明かされていくのは面白いです。ただ、設定自体が結構陰惨なので、個人的にはちょっとしんどいところもあります。

登場人物は全て仮想人格ということになります。生身の人間とはちょっと違った行動原理をもつ住人たち。こういう設定は割りと好物ですが、お客さんを相手にするためか割とリアルに近い人格なので、そこが面白いのか物足りないのかは評価の難しいところです。

「数値海岸」や「硝視体」、「天使」などの重要な設定について詳細が明かされないままなので、SF的設定について楽しめるのは次巻からになりそうですね。実際のところ、ネットの評判をちらっとチェックした限り、続巻のラギッド・ガールが高い評価を得ているようなので、楽しみにしています。

それにしても、これだけ評価の高い作品でも近所の本屋には置いてません。SF不遇の時代は続いている模様です。まぁ、正直この重たい世界観が評価されるSF界の感覚というのは、私もついていくのがしんどい感じはしています。好きなSF作品は大抵ライトノベル出身作家のものですからねぇ・・・

評価:★★☆☆☆

関連レビュー:
『ラギッド・ガール 廃園の天使 2』(飛 浩隆)

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