冒頭で事故の描写があります。その場面へ向けて舞台は着々と進行。誰が、何故、どのような状況で事故を起こすのか。物語自体は淡々と進むのですが、そのそっけなさが緊迫感をいっそう煽ります。
スポーツとしての自転車競技の魅力も十分に伝えられています。特にアシストの役割に焦点を当てている点は面白いです。ネタバレになりそうなので詳しいところは省きますが、なぜエース役でなくアシスト役が本作では主人公となるのかが、読み進めていくうちにだんだんと明らかになってきます。
自転車レースについての詳細は知らなくても問題ありません。作品中で十分説明されています。ただし、説明のための説明ではなく、話が進む中で自然に頭に入ってくるので、薀蓄にうんざりするといったことはありません。筆者の技量に脱帽せざるを得ません。
事故の動機については、流石に無理があるという意見もあるのではと思います。そこをどう評価するのか。ただ、私としては物語の一貫した流れにそったものなので、あまり気になりませんでした。衝撃のほうが大きかったです。タイトルのつけ方が秀逸です。
近藤史恵さんの作品は初めてだったのですが、研ぎ澄まされた客観的描写がすばらしいですね。シャカリキ!
評価:★★★★★
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