2010年7月26日月曜日

『ローマ人の物語〈14〉パクス・ロマーナ(上)』(塩野七生) このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

アントニウスを打ち破ったアウグストゥスにより帝政が始まります。しかし、君主とか王とかの存在に大きな拒否反応を示す共和制ローマのこと、カエサルの轍を踏まないためにも、導入は慎重にならなければいけません。オクタヴィアヌス改めアウグストゥスによる、長くて地味な戦いの始まりです。



日本史に例えると、カエサルが信長ならアウグストゥスは家康ということになるでしょうか。とにかく慎重で気の長い人です。その政策の完成が何十年になるということもあり、筆者も叙述に苦労しています。あちこち少しずつ手をつけているので、時系列だとわけが分からなくなるのですね。

とにかく名より実を取れの徹底。「これより共和制に戻ります」なんて言って表向きの地位や特権を返上しつつ、重要な実権は目立たないように維持していきます。

それにしても、ローマ人の血へのこだわりの無さは不思議な感じです。アウグストゥスは人妻に横恋慕して強引に(とはいえ同意の上で)自分のものにしてしまいますが、その二人目の奥さんとは一生添い遂げることになったそうな。しかも、男子の実子が生まれなかったため、彼女の連れ子ティベリウスを後継者とします。そのあたりの感覚が面白いです。

戦が苦手なため、戦い方もカエサルとは自ずから違ったものとなります。このあたり、自分に何が出来るのかを見極める冷静さが凄いですね。何でも出来てしまったカエサルよりは、凡人にとっては範とすべきところが多いように思えます。

評価:★★★☆☆

続巻:『ローマ人の物語〈15〉パクス・ロマーナ(中)』(塩野七生)

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