前巻に続きローマのインフラ編。本書では水道とソフト面のインフラがとりあげられています。軍隊=建設屋というのはとても理にかなっているように思いますね。続巻への前振りもちらほら見られます。
素人的にみると、街道を作るより水道工事のほうがかなり難易度の高いものに見えます。実際、水路の通し方や水圧など、考慮すべき点は多かったようです。共和政、帝政をあわせて10以上の水道がローマには引かれていたとか。人口拡大に伴う需要に応じたのはもちろん、工場専用水道なんてのもあったようです。
塩素などの薬品無かった当時、水質を保つ手段は流しっぱなしにすることだったそうです。ずっとひとところに沈殿させているから腐っていくのですね。たえず流していればOKという考え。もったいないようでも水源が枯れるわけではないですし、理にかなっています。
ソフト方面のインフラとしては、医療と教育が取り上げられています。道や橋や水道が、為政者の義務とばかりにたいそう力を入れられていたのに対し、医療と教育については各家庭に任されていたそうです。だから、大都市ローマには大きな病院や学校の跡がみられなかったとか。
家任せだからといって水準が低かったわけではもちろんありません。国が行っていないのに何故インフラなのかというと、政策として医師や教師にはローマ市民権が与えられていたためです。優秀な医師や教師はギリシアなどの外国人に多かったため、ローマ市民権という餌でもってローマ内における水準を高めようとの施策。
ちなみに、キリスト教国教化にともない医療も教育も国から提供されるものとなるのですが、私的なときより公的に変わったほうがレベルが落ちている点について、筆者はちくっと皮肉っています。国に任せた挙句の医療制度崩壊やゆとり教育の弊害を目の当たりにした我々としても、考えるべきことは多々ありそうです。
評価:★★☆☆☆
関連レビュー:
ローマ人の物語〈27〉すべての道はローマに通ず〈上〉(塩野七生)
2010年10月9日土曜日
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