3人の幼馴染が霊獣に誘われ桃源に集い、夢と現実を行き来する中華ファンタジー。色々と倒錯があって、不思議な雰囲気を醸し出しています。中編3編の構成となっていますが、話はつながっているので実質一つの長編です。2話目までは凄くよかったのですが、最後がいまいちだったかも。
科挙を目指す文人肌の十八歳「蘇二郎(そじろう)」、すらりと長身で身体能力に優れた女丈夫の十六歳「盧七娘(ろしちじょう)」、そして近隣に比類なき美しさを誇る十七歳の「葛小妹(かつしゃおまい)」。現実世界で志し破れつつある彼らが、夢のなかで思うままに活躍する話・・・なのですが、いろいろと一筋縄ではいきません。
まずは3人の年齢。現実では同年代なのに、夢の中では親、子、孫くらいの年齢差となってしまいます。ちなみに二郎は現実世界で小妹に想いを寄せているのですが、それがあちらの世界では・・・といった感じの、なんとも奇妙な状況に陥ります。まあ、二郎は現実でも夢でも全然相手にされないのですけれど(^^;
通常、夢のほうが空想的になるかと思いますが、本作では全く逆です。現実世界で霊獣たちに導かれた地はまさに桃源郷。一方、夢のほうはリアルな唐代玄宗皇帝の御世です。といいますか、玄宗はじめ実際の史実の人物達が登場する本格歴史小説です。ここにも不思議な倒錯があります。
3つの中編は3人それぞれの視点から語られています。一話目「楽昌珠」は二郎、二話目「復字布」は七嬢、三話目「雲門簾」は小妹が主人公となります。個人的な印象では、話の面白さはキャラクターの魅力に比例するかもしれません。七嬢>二郎>小妹の順ですね。いかにも宝塚な七嬢が一人勝ちです。
3人はそれぞれ、現実世界で想い焦がれていた通りの人生を夢の中で経験することになるのですが、実際に体験してみれば人生それほど甘くは無いのだなと、若干の苦い思いも味わうこととなります。そのあたり、夢なのに全然やさしくありません。
この倒錯された設定が、直接何かのオチにつながるというわけではありません。ちょっともやもやが残る感じで私の好みとは言いがたいのですが、雰囲気小説が好きな方にはお勧めです。武人の七譲が活躍する2話目はすごく良かったんですけどね。話の順番によって全体の印象もかなり変わったかもしれません。
評価:★★☆☆☆
2010年10月20日水曜日
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